日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『たんぽぽになりたくて』 南塚直子

(月刊「こどもの本」2024年6月号より)
南塚直子さん

たんぽぽになりたくて

『たんぽぽになりたくて』という絵本が、この二月に童心社から出版されました。内田麟太郎さんの詩に、私が銅版画で絵をつけた絵本です。

 この詩に私が初めて出会ったのは、内田麟太郎さんの「広告する日記」というブログの中。いつだったか正確には思い出せませんが、二、三年前のことでした。

 たんぽぽの綿毛が主人公の短い詩でしたが、読むと胸がいっぱいになって、せつなくなって、心がうるうるしました。

 そして、目の前に、たんぽぽや、たんぽぽ野原が浮かびます。


 たんぽぽの わたげは
 とんでいく
 わらいながら とんでいく
 また たんぽぽに なれるから
 また こどもたちに あえるから

 いきたいところは
 えらべないのに
 かぜが いきさきは きめるのに
 でも わたげは
 わらいながら とんでいく

 また たんぽぽに なりたくて
 ………


 もしかしたら、この詩は絵本にできるかもしれない。そう思って、一行ごとに絵をイメージして、鉛筆で落描きしていきました。すると、小さなメモ用紙に描いた絵十枚ほどをつなげると、たんぽぽがいっぱいの絵本が現れたではありませんか。

 一晩寝かして、明くる日、内田さんに絵の写真を添付してメールしました。内田さんは、心底驚かれたようでしたが、絵本にすることを了解してくださいました。こうして、永遠に巡る生命の絵本、かわいくてせつない、光に溢れた絵本『たんぽぽになりたくて』が生まれたのです。

 表紙のたんぽぽは今、おひさまのような笑顔を浮かべて、本屋さんや図書館で、みなさんをお待ちしています。

(みなみづか・なおこ)●既刊に『うさぎのくれたバレエシューズ』(安房直子/文)、『はなになりました』(内田麟太郎/文)など。

『たんぽぽになりたくて』"
童心社
『たんぽぽになりたくて』
内田麟太郎・文/南塚直子・絵
定価1,430円(税込)