
たんぽぽになりたくて
『たんぽぽになりたくて』という絵本が、この二月に童心社から出版されました。内田麟太郎さんの詩に、私が銅版画で絵をつけた絵本です。
この詩に私が初めて出会ったのは、内田麟太郎さんの「広告する日記」というブログの中。いつだったか正確には思い出せませんが、二、三年前のことでした。
たんぽぽの綿毛が主人公の短い詩でしたが、読むと胸がいっぱいになって、せつなくなって、心がうるうるしました。
そして、目の前に、たんぽぽや、たんぽぽ野原が浮かびます。
たんぽぽの わたげは とんでいく わらいながら とんでいく また たんぽぽに なれるから また こどもたちに あえるから いきたいところは えらべないのに かぜが いきさきは きめるのに でも わたげは わらいながら とんでいく また たんぽぽに なりたくて ………
もしかしたら、この詩は絵本にできるかもしれない。そう思って、一行ごとに絵をイメージして、鉛筆で落描きしていきました。すると、小さなメモ用紙に描いた絵十枚ほどをつなげると、たんぽぽがいっぱいの絵本が現れたではありませんか。
一晩寝かして、明くる日、内田さんに絵の写真を添付してメールしました。内田さんは、心底驚かれたようでしたが、絵本にすることを了解してくださいました。こうして、永遠に巡る生命の絵本、かわいくてせつない、光に溢れた絵本『たんぽぽになりたくて』が生まれたのです。
表紙のたんぽぽは今、おひさまのような笑顔を浮かべて、本屋さんや図書館で、みなさんをお待ちしています。
(みなみづか・なおこ)●既刊に『うさぎのくれたバレエシューズ』(安房直子/文)、『はなになりました』(内田麟太郎/文)など。
童心社
『たんぽぽになりたくて』
内田麟太郎・文/南塚直子・絵
定価1,430円(税込)