日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『いてもたっても』 たけがみたえ

(月刊「こどもの本」2024年6月号より)
たけがみたえさん

いてもたってもは、無敵です!

 春夏秋冬、「あーーーいてもたってもいられない!」、この気持ちは突如やってきます。

 まだまだ寒い2月中旬の雑木林。枯れ葉の中からポッと目に飛び込むクリーミーなキミドリ色。あ、あれは…ふきのとう!! 見つけた瞬間私の心はときめき、「いてもたってもいられない」気持ちがこみ上げます。ひとつ見つけるとふたつ、みっつ、よっつ。あっちにもこっちにもふきのとうが目に飛び込んできて、もうだれにも止められません。ビニール袋はずっしりと重くなり気がつけば体もポカポカ汗ばむほどに。採って、においを嗅いで、集めて、食べて。なんとも至福です。たったひとつのふきのとうからこんなにも喜びが広がります。

 それから展覧会にて。棟方志功の本物の板画を見ました。和紙に刷られた板画の表面は凸凹していたり、インクがかすれていたり、にじんでいたり、まるで踊っているようです。画像や映像だけではわからない魅力が目に飛び込みます。なんてかっこいいんだ、なんて楽しいんだ、私の心はときめき、今すぐに作品をつくりたい!と、またもや「いてもたってもいられない」気持ちになり創作意欲が掻き立てられます。だけど、こんなにも大きな力が漲る感情なのにタイミングを逃したり躊躇したり後回しにすると、あっという間に薄れてしまう儚さもあります。だからこそ、「いてもたってもいられない」気持ちにフッと乗っかれた日は最高です。楽しいです。自慢です。

 私の新しい絵本『いてもたっても』はそんな気持ちをまだ知らないこけしが主人公です。こけしの元には、いてもたってもいられない気持ちに掻き立てられた生き物たちが 次々とやってきます。こけしにとってはみんなが興奮している意味がわかりません。いてもたってもいられないって、なにごと? 楽しいの? 美味しいの? なんなの?! そんな興味をきっかけにこけしの心は、だんだんだんだん動き出し…。「いてもたってもいられない」、この気持ちは無敵です!

●既刊に『みたらみられた』『きょうは泣き虫』『わたしはかわいいマヌルネコ』など。

『いてもたっても』"
小学館
『いてもたっても』
たけがみたえ・作
定価1,760円(税込)