日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『きょうのフニフとあしたのフニフ』 はせがわさとみ

(月刊「こどもの本」2024年6月号より)
はせがわさとみさん

きのう、きょう、あしたの自分

 仲のいい大好きな友人の家に、ときどき自転車で遊びにいきます。その家には三人兄妹のこどもたちがいて、私を歳の離れた友人のように迎えてくれます。その子たちに会うたびに思うのは「ああ、いつのまに、こんなに大きくなって……!」

 見た目だけの話ではもちろんなくて、大好きな友人の大好きなこどもたちは、いつのまにか自分のおやつをわけてくれるようになって、いつのまにか一人でおつかいに行って、ちゃっかりおまけのお菓子も買って来られるようになって、いつのまにか、私の失敗を「そんなの大丈夫だよ」とやさしく笑い飛ばしてくれるようになっているのです。

 どんどん変わっていく様子を目を細めて眺めながら、ある日ふと考えました。同じだけの時間が過ぎているはずなのに、私は何が変わった? 昨日と今日は、何が違う? 絵を一枚描いた? お話をひとつ書き上げた? 新しいこと、何かひとつでも覚えた??

 シリーズ2作目の『きょうのフニフとあしたのフニフ』は、そんな自分の若干の不甲斐なさと、日々の暮らしの中でたくさんのことを発見し、吸収し、変わっていくこどもたちの素晴らしさとを、まぜてこねてつくりました。

 考えることが大好きなぞうのフニフは、私の代わりに「昨日の自分と今日の自分は何が違う?」と問いかけてくれます。頼もしいわにのワムくんは、落ち込むフニフの気持ちも、こんがらがったおかしな出来事も、どーんと受け止めて笑ってくれるのです。

 私が気づかなかった「いつのまにか」の中身こそ、昨日まで知らなかったことをひとつ知ったり、食べたことのないものを初めて味見したり、ご近所の公園で大冒険したりする、ユーモアと優しさで満ちた日々の積み重ねなのだろうなと、嬉しく想像しながらお話を書いたのでした。

 前作に続き4つのお話がはいっています。フニフとワムくんの様々な「今日」です。読み終えた時、フニフのように「あしたの自分が楽しみだよ」と笑ってもらえたら嬉しいです!

●既刊に『ぞうのフニフとわにのワムくん』『ホカリさんと ふゆの おくりもの』(かわかみたかこ/絵)など。

『きょうのフニフとあしたのフニフ』"
佼成出版社
『きょうのフニフとあしたのフニフ』
はせがわさとみ・作
定価1,430円(税込)