日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『はみがきしてもいいですか?』 きたやまようこ

(月刊「こどもの本」2023年12月号より)
きたやまようこさん

身の回りのすべての物たちは、いっしょに暮らす仲間

 くまのくーたんの身の回りには、生活に必要ないろいろな物があります。でも、それらはただの物ではなくて、いっしょに暮らす仲間たちなのです。みんなは、毎日それぞれに、自分の出番を待っています。

『はみがきしても いいですか?』は、くーたんと歯ブラシさんのお話です。

 くーたんが、おにぎりを食べ始めると、歯ブラシさんがやってきます。

 歯ブラシさんは、たずねます。「はみがきしても いいですか?」くーたんが、答えます。「まだです まだです まだまだ たべます」早く歯を磨きたい歯ブラシさんは、くーたんが食べ終わるのを今か今かと待っています。「はみがきしても いいですか?」何度もたずねる歯ブラシさんに、くーたんは、「まだです まだです まだまだ たべます」と、次々に食べて、なかなか歯を磨かせてくれません。

 ようやくおなかがいっぱいになったくーたんが言います。「おまたせしました おねがいします」大きく開いたくーたんの口の中に、歯ブラシさんは大喜びで飛び込みます。

 このお話が浮かんだ時、頭がブラシの黄色い歯ブラシさんが同時に出来ました。お話と一緒に、表情豊かな歯ブラシさんが自然に動き出したのです。

 悩んだのは、くーたんの口の中の絵でした。くーたんはクマなので、クマの口の中を描くの? 形は? 歯は?

 考えた末、口の中は上下20本の乳歯が生えている幼児の口にしました。くーたんの口の中と、絵本を見てくれる子どもの口の中を同じにしたかったのです。違和感なく描けたと思います。

『くーたんのせいかつ絵本』は、他に、『おふろに ちゃっぽーん!』と『いっしょに ねるこ だあれ?』があります。

 いつも使っている身の回りの物たちは、それぞれに大好きな仕事を持っていて、自分の出番を待っています。子どもたちが、日々の生活の中で身近な物に目を向け、興味を持ち、大切にしてくれたらいいなあと願っています。

●既刊に『うさぴょんのせいかつ絵本』(全3巻)、「ゆうたくんちのいばりいぬ」シリーズなど。

『はみがきしてもいいですか?』"
あすなろ書房
『はみがきしてもいいですか?』
きたやまようこ・さく
定価990円(税込)