
身の回りのすべての物たちは、いっしょに暮らす仲間
くまのくーたんの身の回りには、生活に必要ないろいろな物があります。でも、それらはただの物ではなくて、いっしょに暮らす仲間たちなのです。みんなは、毎日それぞれに、自分の出番を待っています。
『はみがきしても いいですか?』は、くーたんと歯ブラシさんのお話です。
くーたんが、おにぎりを食べ始めると、歯ブラシさんがやってきます。
歯ブラシさんは、たずねます。「はみがきしても いいですか?」くーたんが、答えます。「まだです まだです まだまだ たべます」早く歯を磨きたい歯ブラシさんは、くーたんが食べ終わるのを今か今かと待っています。「はみがきしても いいですか?」何度もたずねる歯ブラシさんに、くーたんは、「まだです まだです まだまだ たべます」と、次々に食べて、なかなか歯を磨かせてくれません。
ようやくおなかがいっぱいになったくーたんが言います。「おまたせしました おねがいします」大きく開いたくーたんの口の中に、歯ブラシさんは大喜びで飛び込みます。
このお話が浮かんだ時、頭がブラシの黄色い歯ブラシさんが同時に出来ました。お話と一緒に、表情豊かな歯ブラシさんが自然に動き出したのです。
悩んだのは、くーたんの口の中の絵でした。くーたんはクマなので、クマの口の中を描くの? 形は? 歯は?
考えた末、口の中は上下20本の乳歯が生えている幼児の口にしました。くーたんの口の中と、絵本を見てくれる子どもの口の中を同じにしたかったのです。違和感なく描けたと思います。
『くーたんのせいかつ絵本』は、他に、『おふろに ちゃっぽーん!』と『いっしょに ねるこ だあれ?』があります。
いつも使っている身の回りの物たちは、それぞれに大好きな仕事を持っていて、自分の出番を待っています。子どもたちが、日々の生活の中で身近な物に目を向け、興味を持ち、大切にしてくれたらいいなあと願っています。
●既刊に『うさぴょんのせいかつ絵本』(全3巻)、「ゆうたくんちのいばりいぬ」シリーズなど。
あすなろ書房
『はみがきしてもいいですか?』
きたやまようこ・さく
定価990円(税込)