日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『ぽんぽこあめふり』 田中友佳子

(月刊「こどもの本」2023年12月号より)
田中友佳子さん

雨なんてへっちゃら!

 この絵本のお話を思いついたのは、コロナが猛威を振るっていた夏の雨の日。行動制限のため屋内でも屋外でも思うように遊べないなんて、子どもには辛いよなあ、と思いながら激しく降る雨を窓越しに見つめていた時でした。ふと雨にも負けず外で遊ぶ子どもの歓声が聞こえたような気がしてイメージが広がり、一気に『ぽんぽこあめふり』のラフを描き上げました。

 ところで、うちの二人の子どもは小さい頃から外遊び大好き人間です。下の子が三歳くらいの時、土砂降りの雨が降る夕方にもかかわらず公園に行きたがるので、思い留まらせようとしたら、「あめでもあそぶ、よるでもあそぶ、つかれててもあそぶ!」と宣言された記憶があります。夏はもちろん、真冬でも裸足で泥遊びをする我が子たち。毎日のように、泥水でぐしょぐしょに汚れたダウンジャケットを外の冷たい水で下洗いしていた私は「こんな寒い日に泥んこ遊びなんてどうかしているっ」とブツクサ呟きながらも、どこかで子どもたちをたくましく思っていました。考えてみれば、何の先入観もない子どもにとって、天気も気温も関係ありません。どんな日でも、その日その一瞬でしか味わえない楽しみと発見があったのだと思います。

 この絵本の主人公はたぬきですが、他に登場するのは妖怪の雨ふり小僧や河童など、雨なんてへっちゃらな子どもたち。中でも雨ふり小僧は雨のエキスパート。人間の我が子より何倍も雨が好きなはずです。ですから、晴れた日以上に雨の日を楽しみ尽くします。

 絵を描く上で気をつけたのは、雨の中で遊びまくる子どものパワーを表現するために、風景を暗くさせないこと。ものが濡れると色彩が鮮明に見える様子も表現したいと思いながら、試行錯誤して描きました。

 この本を読んで、雨の日ならではの色彩や匂いを感じ、登場する彼らと一緒に雨を楽しんでもらえたら嬉しいです。

(たなか・ゆかこ)●既刊に『こんたのおつかい』『かっぱのかっぺいとおおきなきゅうり』『たぬきがのったらへんしんでんしゃ』など。

『ぽんぽこあめふり』"
徳間書店
『ぽんぽこあめふり』
田中友佳子・作・絵
定価1,760円(税込)