日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『数字でわかる! データから見る医療のいまとこれから』 村上正泰

(月刊「こどもの本」2023年12月号より)
村上正泰さん

これからの医療のあり方

 本書は、日本の医療を取り巻く状況について豊富なデータを紹介し、中学生や高校生がこれからの医療のあり方を考えることができるよう、分かりやすい解説を加えています。

 2020年以降、新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、医療の仕組みに対する国民の関心はこれまで以上に高まっています。コロナ禍によって、新興感染症のような危機への対応体制のみならず、日本の医療制度が平時から抱えているさまざまな課題が露呈することになりました。

 急速な少子高齢化の進展と人口減少によって、医療ニーズも大きく変化しています。それに合わせて、日本の医療制度を見直さなければならないという議論が行われていた最中に起きたのがコロナ禍なのです。そして、コロナ禍を経験した今だからこそ、医療提供体制の見直しはますます避けられない課題となっています。

 それでは、日本の医療制度にはどのような特徴があるのでしょうか。そして、我々はどのような変化に直面しているのでしょうか。本書では、人口や患者数の推移、医療費の動向、医師や看護師などの医療従事者の状況、平均寿命や疾患ごとの特徴について、いくつもの問いを立てています。それらの問いへの答えを考えながら、図表のデータを読み解いたり、それらをヒントにしてさらに自分で調べることによって、理解が深まっていくように工夫されています。

 医師や看護師などになりたいと考えている生徒も多くいると思います。そうした人たちには、将来、自分がどのような世界に歩みを進めるのか、進路を考える材料にもなるでしょう。それ以外の生徒にとっても、これからの医療のあり方は身近に関わり得る問題であると同時に、重要な社会問題でもあります。これからどのような進路を歩むにせよ、知っておいて欲しい、考えて欲しい論点が数多くあります。

 本書を活用することにより、医療のあり方について学ぶ機会を作っていただけることを期待します。

(むらかみ・まさやす)●既刊に『医療崩壊の真犯人』『医政羅針盤 激動する医療と政策の行方』など。

『数字でわかる! データから見る医療のいまとこれから』"
保育社
『数字でわかる! データから見る医療のいまとこれから』
村上正泰・監修
定価3,300円(税込)