日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『ヨルとよる』 あさのますみ

(月刊「こどもの本」2023年11月号より)
あさのますみさん

忘れられない7ヶ月

 外で暮らしていた猫を保護して、しばらくお世話したことがある。

 驚いた。子猫のころから家の中で育った我が猫たちとは、なにもかもまるで違うのだ。近づけばシャーッと牙をむき、鋭い爪で猫パンチ。吊り上がった目でこちらを睨みつける。ガリガリに痩せているのに、警戒してなかなか食事をしない。二段ケージに入れて毎日声をかけ、隣で寝たりもしたけれど、保護したとき毛に絡みついた枯葉を取る、たったそれだけのことに、なんと2ヶ月もかかった。我が家の猫たちは、私の顔を見ただけで、喉を鳴らして擦り寄ってきてくれるというのに。

 あの経験が、『ヨルとよる』には入り込んでいる。外の世界を知らない黒猫のヨルと、家で暮らしたことがないネズミ。ひょんなことから2匹は出会い、お互いの世界を相手に伝えようとする。

 ヨルのモデルは、うちの猫。おっとりしていて、疑うことを知らない。キラキラ光る大きな目で、まっすぐ世界を見つめる。ネズミは、あのとき保護した猫。人間を警戒し、たった1匹でサバイバルしながら生きている。

 ネズミが、ヨルと出会って新しい世界を知ったように、保護した猫も、うちの猫たちと対面させてから、どんどん表情が柔らかくなっていった。膝に乗ることを覚え、ブラッシングが好きになり、うちの猫たちと一緒に眠るようにもなった。実は以前は飼い猫で、その後捨てられてしまった子なのだと、猫ボランティアさんが教えてくれた。それでも、うちの猫たちを見るうちに、もう一度人を信じてもいいと思ってくれたようだった。保護から7ヶ月がすぎるころには「あなた、本当はこんな顔してたの!」と驚くほど優しい顔つきになって、今は里親さんのお家で、幸せに暮らしている。

 すべての小さな生き物にとって、世界が優しい場所であるといい。そんなことを思っていたら生まれた、『ヨルとよる』。ヨルとネズミはお互いを知り、ここからどう暮らしていくのだろう。読み終えたあと想像を膨らませてもらえたら、とても嬉しい。

●既刊に「アニマルバス」シリーズ、『まめざらちゃん』『おおきなおさら』など。

『ヨルとよる』"
教育画劇
『ヨルとよる』
あさのますみ・作/よしむらめぐ・絵
定価1,540円(税込)