日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『相方なんかになりません! 心晴にライバル!? 真夏のビーチで大ピンチ』 遠山彼方

(月刊「こどもの本」2023年10月号より)
遠山彼方さん

オーサカ・マジカル・シティ

「急に何を言い始めたんだ」と思われるかもしれないが、私の母は魔女だ。

 それは決して、しょっちゅう日本語ではない謎の呪文を唱えているからだとか(言い間違いともいう)、よく呪物のようなゴツめの指輪をはめているからだとか(当たると痛い)、そういう理由で言っているのではない。

 私の母は、人の感情を容易に操る魔法が使える。もっと具体的に言えば、「人を笑顔にさせる魔法」だ。

 魔女は、身近な人はもちろん、店員さんなんかにも冗談をかまして笑わせてしまう。かつて保護者面談で担任を笑わせすぎて、面談出禁になったこともある。「よくやるよ」と私が呆れると、魔女は決まってこう答える。「あたし、大阪のオバチャンやから」

 どうやら魔女の里・オーサカには、魔女以上の猛者がゴロゴロしているらしい。実際、母方の一族が集まると、狭い六畳間がボケとツッコミで埋め尽くされる。「ウケるまでボケる、ウケたらもっとボケたおす」。そんなオーサカお笑いスピリッツを感じながら、私は魔法にかけられるがまま。オーサカ、なんて恐ろしい街だ。

 一方、私は生粋のカナガワの民だ。魔女の血はあんまり遺伝せず、「真面目」「大人しい」と言われて育った。でも、そう言われるたびに少し悔しかった。魔女みたいに笑顔の魔法を使えるようになりたい。そう思って生きてきた。

 だから、そんな悔しさと憧れを詰め込んだ物語を書いた。それがこの『相方なんかになりません!』だ。オーサカ生まれの男の子が、カントウ生まれの女の子を巻き込んで、たくさんの笑いを届けるラブコメディ。最高じゃんか。いや、最高やろ。そう思って妄想をしたためたら、本当に運よく編集さんに「面白い!」と言ってもらえた。

 あのはやり病やあの戦争。ものの値段もつり上がるばかり。そんな世界に生きる子どもたちに、少しでも「笑い」をお届けできたなら。もう、それしか考えずにこの物語を書いております。

 私の「魔法」、あなたにウケたら幸いです。アカンかったら、堪忍な。

(とおやま・かなた)●既刊に「相方なんかになりません!」シリーズ、『学園ミリオネア 100万円ゲーム』など。

『相方なんかになりません!
集英社
『相方なんかになりません! 心晴にライバル!? 真夏のビーチで大ピンチ』
遠山彼方・作/双葉 陽・絵
定価770円(税込)