日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『工藤直子全詩集』 工藤直子

(月刊「こどもの本」2023年10月号より)
工藤直子さん

「ことば」といっしょに

 どんな本ですか? と、たずねられたら、十五歳から現在まで、書きとめたり、本になったりした、工藤直子の詩を、ぜ〜〜んぶまとめた本です。と答えます。

 え? なにそれ? と、さらに聞かれたら、今まで出版した、詩の本たちから、本、というまとまりを、はずし、おまけに、添えられた絵や写真などもはぶき、未発表の詩や俳句も入れて、発表順にまとめた本…えーと…資料みたいな本…です、と答えます。

 え?え? わかんな〜い。と言われたら、わたしも、うまく言えな〜い、と答えます。

 それから、しばらくの間考えこんで、

 …あ、そうだ。あなた、知ってる? と、逆にたずねます。

 えーと、ね。理論社から出版された本で『まど・みちお全詩集』『阪田寛夫全詩集』という本があるんです。それと同じ考えでまとめた本なんです、と。これらの全詩集シリーズは、名編集者、伊藤英治さんが企画され、それらの本を、まとめておられる最中、残念にも亡くなられました。

 生前、伊藤さんは、よく私に、こう話しかけてくださいました。

「まどさん、阪田さんの次は、工藤さん、あなたの全詩集ですよ」と。

 私は、まどさん阪田さんの大ファンでしたので、そのお二人と、同じ企画の本を制作していただける! と思うと嬉しくてなりませんでしたが…。

 その後、伊藤さんの志を、理論社はしっかり受け継いで下さり、伊藤さんのあとを、編集者の市河紀子さんが、引き継いで下さり、『工藤直子全詩集』が、誕生した、という次第です。

 説明が、ややこしくなりましたが、えーと、つまり…そういう本なんです。

「ことば」が好きで、ことばを通して自分の中の、まだ気づいていない自分を探そうと書き続け八十歳を越えました。これからは、この本を時々めくり、ほほう直子はこんなこと感じてたの?なんて、つぶやきたいと思います。

(くどう・なおこ)●既刊に『ともだちは海のにおい』『てつがくのライオン』『こどものころにみた空は』など。

『工藤直子全詩集』"
理論社
『工藤直子全詩集』
伊藤英治、市河紀子・編/長 新太・装画
定価9,900円(税込)