
「ことば」といっしょに
どんな本ですか? と、たずねられたら、十五歳から現在まで、書きとめたり、本になったりした、工藤直子の詩を、ぜ〜〜んぶまとめた本です。と答えます。
え? なにそれ? と、さらに聞かれたら、今まで出版した、詩の本たちから、本、というまとまりを、はずし、おまけに、添えられた絵や写真などもはぶき、未発表の詩や俳句も入れて、発表順にまとめた本…えーと…資料みたいな本…です、と答えます。
え?え? わかんな〜い。と言われたら、わたしも、うまく言えな〜い、と答えます。
それから、しばらくの間考えこんで、
…あ、そうだ。あなた、知ってる? と、逆にたずねます。
えーと、ね。理論社から出版された本で『まど・みちお全詩集』『阪田寛夫全詩集』という本があるんです。それと同じ考えでまとめた本なんです、と。これらの全詩集シリーズは、名編集者、伊藤英治さんが企画され、それらの本を、まとめておられる最中、残念にも亡くなられました。
生前、伊藤さんは、よく私に、こう話しかけてくださいました。
「まどさん、阪田さんの次は、工藤さん、あなたの全詩集ですよ」と。
私は、まどさん阪田さんの大ファンでしたので、そのお二人と、同じ企画の本を制作していただける! と思うと嬉しくてなりませんでしたが…。
その後、伊藤さんの志を、理論社はしっかり受け継いで下さり、伊藤さんのあとを、編集者の市河紀子さんが、引き継いで下さり、『工藤直子全詩集』が、誕生した、という次第です。
説明が、ややこしくなりましたが、えーと、つまり…そういう本なんです。
「ことば」が好きで、ことばを通して自分の中の、まだ気づいていない自分を探そうと書き続け八十歳を越えました。これからは、この本を時々めくり、ほほう直子はこんなこと感じてたの?なんて、つぶやきたいと思います。
(くどう・なおこ)●既刊に『ともだちは海のにおい』『てつがくのライオン』『こどものころにみた空は』など。
理論社
『工藤直子全詩集』
伊藤英治、市河紀子・編/長 新太・装画
定価9,900円(税込)