日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『森のちいさな三姉妹 森ネコさんのおかしをどうぞ』 楠 章子

(月刊「こどもの本」2023年8月号より)
楠 章子さん

わくわく ほっこりを贈りたい

 編集さんから、『へんくつさんのお茶会―おいしい山のパン屋さんの物語』の姉妹編を作りましょうというお話を頂き、とにかく楽しくてわくわくしながら読めて、心がほっこり温かくなる、そんな物語を今の子どもたちに贈りたいなと思いました。そうして書き上げたのが、この新刊です。

 人見知りだった少女時代、私は本が友だちで、息を吸うように読書をしていました。特にファンタジーの本が好きで、空想の世界に遊びにいくように、毎日本のページを開きました。ファンタジーの名作の数々が、少女だった私をどれほど癒し、どれほど支えてくれたことでしょう。

 という訳で今でもファンタジーが大好きなのですが、今の子どもたちに贈るなら、私の子ども時代の名作をなぞるだけでは物足りません。すでに素晴らしい作品はたくさんあるのです。わざわざ新刊を出すならば、とことん今の子どもたちの事を考えて、楽しめる作品でなくては!

 さあ、そこからが大変です。編集さんと二人三脚、さらには絵を添えてくれる画家さんと三人四脚で、こうしましょう、いや、あの方がいいかもと知恵をしぼりながら、プロットを練っていきました。

 主人公のココは、末っ子なのでお姉ちゃんたちに甘えている感じなのですが、実はしっかり者でやわらかい頭を持っています。次々アイデアをひらめき、みんなを巻き込んで、楽しく計画を実行します。ココがひらめいたアイデアは、クラウドファンディングです。善意だけでなく、お互いウインウインでハッピーという発想は、今時で面白いのでは、とか。

 また、今回のメインキャラクターの白猫さんは、大切に育てられたお嬢さんで、箱入り娘ならぬ箱入り猫ですが、素直でタフなハートの持ち主です。少子化で箱入り娘や息子が多い昨今、白猫さんに何かを感じてくれればしいな、とか。他にも工夫を色々と詰めました。今の子どもたちが、楽しんでくれますように。

(くすのき・あきこ)●既刊に『へんくつさんのお茶会』『ひえひえひんやりツアー』『ハニーのためにできること』など。

『森のちいさな三姉妹 森ネコさんのおかしをどうぞ』
Gakken
『森のちいさな三姉妹 森ネコさんのおかしをどうぞ』
楠 章子・作/井田千秋・絵
定価1,540円(税込)