日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『わたしの心のきらめき』 横山和江

(月刊「こどもの本」2023年8月号より)
横山和江さん

続編で主人公の成長を知る喜び

『わたしの心のなか』刊行から十年近く経ち、続編である『わたしの心のきらめき』を訳しました(原書の"Out of My Mind"は二〇一〇年、"Out of My Heart"は二〇二一年刊行)。本作のメロディは十二歳。一作目の最後から一年ほど経った設定で書かれています。続編が出るとは思ってもみなかったので、メロディに再会できて、ほんとうにうれしかったです。

 本作でメロディはサマーキャンプに参加します。じつはアメリカで障害児が参加できるサマーキャンプの歴史は古く、「障害者権利運動の母」として知られるアメリカの障害者権利活動家のジュディス・ヒューマン(一九四七―二〇二三年)も子どものときに参加していたようです。

 通常学級の子たちがサマーキャンプの話で盛り上がるのを見たメロディは自分も参加してみたくなり、曲折を経てサマーキャンプに参加することになりました。隣人のヴァイオレットの家以外に泊まったことがないのに、一週間もキャンプに参加するなんて!と両親は娘の成長を喜ぶより心配が先に立ちました。メロディもまた、わくわくする気持ちと不安な気持ちが交互に押し寄せ、キャンプ場についても落ち着きません。そんなメロディの心配を吹き飛ばしてくれたのは、参加者ひとりひとりにつくキャンプカウンセラーのトリニティです。

 身のまわりの手伝いをしてくれるトリニティといっしょに、メロディはジップラインやプール、芸術活動やキャンプファイヤー、乗馬などさまざまな活動を経験します。そして、参加者たちとの友情をはぐくんでいくのです(なんと初恋も!)。至れり尽くせりのキャンプに感動しつつ、これでは親がそばにいるのと変わらないのではと考えたり、日常生活とのギャップにあらためて失望したりするメロディ。キャンプでの活動を経て成長していく姿がすがすがしいです。

 ぜひメロディの冒険をお読みいただけたらと思います。

(よこやま・かずえ)●既訳書に『目で見ることばで話をさせて』『ジュリアンはマーメイド』『おばあちゃんの にわ』など。

『わたしの心のきらめき』
鈴木出版
『わたしの心のきらめき』
シャロン・M・ドレイパー・作/横山和江・訳
定価1,760円(税込)