日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『ばいばいコロナ』 中川素子

(月刊「こどもの本」2022年1月号より)
中川素子さん

閉塞感を吹きとばす

 コロナ禍は、一体いつまで続くのでしょう。こんなにも長い時間、子どもたちを無意識に浸していく閉塞感が気になります。たとえば、子どもたちが友人たちと顔を合わせず、壁に向いたまま黙って給食を食べるニュースを見た時には、私はその悲しさと恐ろしさに衝撃を受けました。

 もちろん、子どもを思う大人たちの愛情深い指導であることは、子どもたちも理解していると思いますし、この状況をわきまえて、自分の気持ちに蓋をしているとも思います。

 生死の結果にも関わる行動は、考えなければなりませんが、この時代の規制の感覚と、自分を解放できない生き方が、そのまま未来に引き伸ばされていくことが、とても心配なのです。

『ばいばいコロナ』は、世の中に蔓延するそういった閉塞感を吹きとばしたいと思って作った絵本です。

 この絵本に出てくる子どもたちは、大好きな友だちと肩をくんだり、ピッタンコと身をよせ合います。おじいちゃん、おばあちゃんの家に行って、「ひっつきむしさんがきた、きた」と喜ばれます。

 町中の人たちとはギュウウウ、ガシッと〝あんしんあくしゅ〟をし、保育園では、モゾモゾごろごろと青虫や芋虫になって、同じテントでねます。身体をくっつけ合う〝おしくらまんじゅう〟をしたり、仲の良い友人家族と一緒に食事に行ったりもします。

 もちろん、「コロナウイルスがいなくなったら」という前提は書いてありますが、子どもへの感染が皆無でない現在、この絵本の出版を危惧なさる方もおられるかもしれません。

 でも、描かれた子どもたちの喜びにあふれた笑顔を見、のびのびと解放的な気分を感じていただければ、絵本に励まされるのではないかと思います。

 また日隈みさきさんが、多くの画面で、人々の多様性をさらりと描いてくださいました。最後の「みんなで手つなぎ大会」で、新記録達成を宇宙から見ている飛行士は、何とポニーテールの女性です。かっこいい!

(なかがわ・もとこ)●既刊に『コロナ・エポック』『共振』『ジャータカものがたり はじめてのともだち』など。

『ばいばいコロナ』
鈴木出版
『ばいばいコロナ』
中川素子・作/日隈みさき・絵
定価1,650円(税込)