
大人も子どももびっくり! 驚異の図鑑
スティーブン・ビースティー 画/リチャード・プラット 文/宮坂宏美、赤尾秀子 訳
2020年12月〜2021年9月刊行
チャンス到来! 僕は一人、ほくそ笑んだ。二〇一八年のフランクフルトブックフェア。イギリスDK社とのミーティングの席で飛び込んできたビッグニュース! こういうことがあるから僕はブックフェアが好きなのだ。
スティーブン・ビースティーの作品、刊行25周年を記念して、大人気シリーズ「輪切り図鑑クロスセクション」をリニューアルするという。実は、この日を待っていた。すぐに、日本での出版に手を挙げた。
DK社は、ユニークな図鑑で定評のある老舗出版社。中でも、「断面図鑑」という新しい分野のさきがけとなった「輪切り図鑑クロスセクション」シリーズ(岩波書店)は世界的ベストセラーになった。
なにをかくそう、僕はこのシリーズの大ファンだった。はじめて、このシリーズの『ヨーロッパの城』(一九九四年刊行)を読んだときのオドロキは、今も忘れない。
お城も帆船も人体も……なんでも輪切りにして、細密画で徹底図解! それがまた、細密も細密の超細密。だからといって、緻密なだけではない。ピーテル・ブリューゲルの再来かと思うほど、人間味があふれ、ユーモアも感じられ、人間の営みがあたたかく描かれているのである。
こ、これは! と思った当時の僕は、版権の空いているものを探した。そして二〇〇〇年に出版したのが、旧バージョンの『人体透視図鑑』。おかげさまでこちらも評判になり、なかなかのセールスを記録した……のだが、少々残念な点もあった。
旧版は巨大だった。36×28cmもあった。それは長所でもあるが、やはり本棚の収まりはよくない。そして人体の断面というのは、人間の内部、内臓の営みは細部までよくわかるのだが、わかりすぎてしまい、人間味はうすかった……。
新版は、31×26cmとほどよいサイズ。願ったりかなったり。そして、なんとあの『ヨーロッパの城』の版権が戻され、フリーになっていた! 人間味あふれるブリューゲル味を存分に楽しめるのは、やはりこの本だ。
お城と人体、そして他にも版権の空いていた三冊をプラスして、全五冊のシリーズにした。中でも断トツで人気なのは、一巻の『ヨーロッパの古城』。同好の士はやっぱりいたのだ! この「兵器と刑罰」のページを見てくれ……!
本書のおもしろさをわかってくれる人が多いのはうれしい。そして「発売忽ち増刷!」と堂々と書けるのも、またうれしい。