
ももんちゃんの道は、どこまでも……
とよたかずひこ さく・え
2001年9月〜刊行
「もっ!」「ももん!」「ももんちゃーん!」
ももんちゃんを見つけると、あかちゃんが声をあげます。書店で、園で、図書館で……何度この歓喜の声を聞いたことでしょう。
シリーズ刊行から今年で二十年。ももんちゃんはあかちゃんたちの人気者になり、「うちの子にそっくり!」というお母さんやお父さんも虜にしてきました。成長した子が今は弟や妹に読んでくれているというお話や、ももんちゃんのことが大好きだったあかちゃんがもう成人式を迎えるというお話をうかがうと、長い間読み継がれていく絵本に関われる喜びを感じます。
シリーズはじめの二冊『どんどこ ももんちゃん』と『ももんちゃん どすこーい』が刊行されたのは、私が入社一年めのとき。当時、あかちゃん絵本に「さぼてんさん」というとっぴなともだちが出てくることや、シリーズの表紙がすべて同じピンク色で統一されていることは珍しいことでした。
新しい作品がうまれると、とまどいの声があがることがあります。「あかちゃんに、さぼてんは難しいのでは?」「ぜんぶピンクだと表紙が同じに見えてしまう」などという言葉を、私も幾度となく耳にしました。でも、そこにはすべて、とよたかずひこさんの作者としての強い意思と意図があったのです。
主人公のももんちゃんは、おむつ姿で野原をどんどこかけていき、うしさんもおさんぽにつれていってしまうスーパーあかちゃん。いろいろな制約にとらわれず、初めての出会いや、「そんなことあるわけない!」という世界をみなさんに楽しんでほしい。そんな思いから生まれたと聞きました。
それがとっても心を躍らせることなのだと、日本全国のあかちゃんが証明してくれたように思います。「ももんちゃんピンク」と呼ばれる表紙のピンクは、特別なインクを使っています。あかちゃんはこの色を見つけると、はいはいの子もすぐにかけつけてくれます。それも、とよたさんがももんちゃんを視覚的にアピールするために考えてくださったことです。キャラクターに頼らず、一冊一冊の物語のおもしろさにこだわってきたことも、シリーズがつづいてきた理由だと思います。
とよたさんはイベントなどあると、出会った一人一人にお名前を聞き、丁寧にお話をされます。そんなとよたさんのまわりには、いつも人がいっぱい! まるで、どんどこ我が道を行きながらも、いろいろなともだちとなかよくなっていくももんちゃんのようです。
とよたさんとももんちゃんの道は、どこまでもつづいていきます。