
すべてが私の手作りです
子どもの頃、母が人形に着せる小さなセーターを編んでくれたり、余った布を使って人形用の枕や布団など、いろんな小物を作ってくれました。本物そっくりに作られた母の手作り小物が、私のお気に入りでした。
母の手作業を見るたびにワクワクして、そのうちに「自分でも何か作ってみたい!」と思うようになりました。慣れない針と糸を使ってミニチュアのカバンを縫ってみたり、フェルトで帽子を作って人形にかぶせたりしていました。母のようにうまく作れなくても、自分の手で何かを作るということに夢中になっていました。
今思い返せば、こうして手作りを楽しんできた経験が、この「フェーマスしんぶん」という写真絵本を生み出すきっかけになったのだと思います。
絵本に出てくる動物キャラクターをはじめ、背景の小道具や家具など、すべてが私の手作りです。そのため、作品が完成するまでに長い時間がかかりました。
中でも、特に力を入れて作ったものは、レストランの背景セットです。自分がレストランのオーナーになったつもりで「お客さんに喜んでもらえるようなお店にしよう!」と、はりきって制作しました。秋メニューを考えると、粘土でミニチュアの料理を作り、レストランのテーブルには本物の木を使いたいと考え、山奥にある木材屋さんまで足を運びました。
すべてのセットが出来上がると、いよいよスタジオでの撮影が始まりました。スポットライトを浴びたキャラクターたちを見たとたんに、なんだか緊張してドキドキしたのを覚えています。
絵本のワンシーンが目の前に存在していて、キャラクターたちと同じ空間を共有している感じがしました。小道具一つ一つまで丁寧に撮影していただいたことに、今でも感謝しております。
この絵本には、手作りを楽しむ思いがたくさんつまっていますので、ページをめくりながら、画面の隅っこに写る小道具たちにも、目を向けていただけると嬉しいです。
(やまだ・あゆみ)●既刊に『くるみのもりのチューさん』『スペース合宿へようこそ』など。
ひかりのくに
『フェーマスしんぶん あしあとじけん』
山田亜友美・作・制作/玉木順一・写真
定価1,430円(税込)