
赤ちゃん絵本の育て方
ひらぎみつえ 作
2017年4月刊行
丈夫でシンプルなしかけ絵本が赤ちゃんでも楽しめるとひそかに人気らしい、と営業部から話があったのが2015年。まだ、赤ちゃん向けのしかけ絵本は日本で数も少なく、会社でもノウハウもありませんでした。
まず、ペーパークラフト作家でデザイナーの坂啓典さんに、しかけ絵本の構造の分析をお願いし、整理・分類してもらいました。そうしてわかったことは、多層構造になっているしかけの仕組みを理解しながら、見た目は一枚の絵になっているように絵を作っていくのは相当難しそうだということでした。
けれども、作者のひらぎみつえさんは、あっという間にそれを理解し、こんがらがりそうになる構造の絵の描き分けをこなし、いつの間にか、だれも思い付かないようなしかけ絵本のアイデアを次々と考えてくださるようになっていきました。
そうして2016年から刊行されはじめたシリーズの中の1冊に『お?かお!』がありました。これは、本全体が顔になっていて、目や鼻や口がしかけで動くというユニークな絵本。発売するとすぐに品切れになり、年末には、一緒に刊行した2冊の絵本の倍以上を売り上げるようになっていました。
このシリーズをもっと大きく育てていくために、毎年コンスタントにシリーズの新刊を出していこうと会社で話し合いました。作り続ける編集部も、書店さんに置いてもらい続ける営業部も大変さはあります。それでも、新刊を出し続けることで、書店さんや読者のかたがたに、常に新鮮な気持ちでシリーズを手にとってもらえることを目指しました。
書店で目立たせるために考えたのが「動くポスター」。絵本の表紙を大きく印刷して手作りで組み立てるという、手間もコストもかかるものでしたが、いじられすぎて壊れちゃったと書店さんから追加のポスターの要望がたくさん届き、嬉しい悲鳴をあげるほど好評でした。
さらに、『お?かお!』独自の魅力を探ろうと、赤ちゃん研究の第一人者の先生に絵本を見ていただきました。赤ちゃんが最初に認識するのが人の「顔」で、赤ちゃんの目がもっとも反応しやすいのが「動くもの」。『お?かお!』はその両方を満たしているから喜ばれているのではないかと教えていただきました。
現在ではシリーズ累計130万部突破。作家さんやデザイナーさんの力に加え、出版社としてやれることをやり続けることの中に「ヒットのひみつ」があるのかも、と思わせてくれた1冊です。