日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『だんごどっこいしょ』 二宮由紀子

(月刊「こどもの本」2021年3月号より)
二宮由紀子さん

正真正銘のアホ話

 自慢じゃあります(!)が、マザーグースなどの伝承童謡や、いろんな民族の昔話については学生時代から多く読んで研究してきました。だからこそ昨今の「古典は素晴らしい」の「古典は面白い」のといった十把ひとからげの礼賛論議には首をひねります。

 単に「広く知られ、読み継がれてきた」古典の中には、時代の権力の意志や、それに盲従する民衆側の大人の都合で、誤った世間知や親の権威、社会的差別の固定化を子どもに教え諭すものも多いからです。リズムに騙されて読むものの、子どもとしては何とも納得のいかないつまらない話も山とあります。 その点、この『だんごどっこいしょ』は純粋な民衆の笑いだけに支えられてえないよね ……と思われてるお方は、誠に立派な大人の方です。というのも現に先日、私は衣料洗剤のエマールと浴室おそうじ用のバスマジックリンが切れたので、夫との散歩の帰途にダイエーに寄って、ついでにマスクの補充もしようと思い立ちました。家を出る間際につい「前歯、と覚えたら忘れな

語り継がれてきた正真正銘のアホ話。元々、多様なバージョンがあるこの昔いもん」とつぶやいたのが運の尽きで、話の再話を、編集者さんは「子どもと本との最初の出会いを楽しい、おもしろい、幸福なものにしたいと願うシリーズなので」と完全に自由にさせてくださったので、はい、もう私、好きなように楽しく書かせていただきました。そしたら長野ヒデ子さんが一見大胆で素朴に見えて実は隅々まで工夫が凝らされた、素晴らしいユーモアと自由さがあふれ出す絶品の絵を描いてくださって! そう、この絵本との出会いを一番最初に「楽しい、おもしろい、幸福なもの」とさせていただいたのは間違いなく、この私自身でございます。 しかし、落語にもなってる手法とはいえ、こんなアホな話、実際にはあり

散歩の道々、夫が「奥歯」とか「歯抜け」とか「入れ歯」とか耳元にささやきかけてくるので ……おかげで、その日は石焼き芋と冷蔵庫とバズーカ銃を買って帰った、というのは嘘だけど。

(にのみや・ゆきこ)●既刊に『くまくん』『1(いち)と7(しち)』『どうぶつたちのうた』など。

『だんごどっこいしょ』"
ひかりのくに
『だんごどっこいしょ』
二宮由紀子・文/長野ヒデ子・絵
本体1,300円