日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

我が社の売れ筋 ヒットのひみつ9
「飼育員さんに聞こう! どうぶつのひみつ」シリーズ 新日本出版社

(月刊「こどもの本」2019年5月号より)
「飼育員さんに聞こう! どうぶつのひみつ」シリーズ

動物たちの魅力を引き出したチーム力
「飼育員さんに聞こう! どうぶつのひみつ」シリーズ
松橋利光 写真
池田菜津美 文
2014年5月~2015年1月刊行

 松橋利光さんの写真がすばらしいのと、池田菜津美さんの文章がわかりやすい。そして、和みの空間を作り出しているイラストの神田めぐみさん。構成や書体にもこだわりを持って見やすい本に仕上げてくれたデザイナーの松倉浩さん。

 わすれてはいけないのが、取材にご協力いただいた各動物園の飼育員さんたち。動物の担当者のキャラも生き生きしていて、そこも読むのが楽しいところです。

 それらにつきると言っていいのですが、六冊の本、各々の主役であるパンダ、ゾウ、ライオン、キリン、イルカ、ラッコの人気も相乗効果というか、注目を得るポイントになったと思います。

 学校図書館向き図書としての企画ですが、同じ松橋さん・池田さんコンビの「飼育員さんひみつおしえて! 水族館・動物園」の四冊の本が原型になり、そちらがいろいろな動物たちを紹介するのに対して、こちらは人気の動物に絞って一種類を一冊で紹介しています。それぞれのシリーズがそれぞれよい感じで受け入れられていると感じます。

 池田さんが知り合いの保育園にプレゼントしたところ、「字の読めない子どもたちも、これは何々の動物だねと喜んで見られる本」と、喜ばれたそうです。

 もう少し詳しく見ていくと、本の構成は、始めに動物園に来た観客目線、グラビア的な動物のかっこいい姿や、「あれっ?」と引っかかったり、不思議に思ったりするところがならびます。それが導入になって、本の後半の種明かし的な動物園のバックヤードや、動物の能力、個性の紹介へとつながっていくのです。

 こうした構成が、見やすさとわかりやすさを生んでいると思います。松橋さん・池田さんこだわりの構成です。

 そして、丸ゴチックの本文や見出しの書体が、あたたかみを感じる紙面を創り出していて、引き込まれます。さらに、飼育員さんと動物のやりとりや、動物の個性といったストーリーのあるものはイラストで紹介しています。ある意味大胆で、面白みのある神田さんの絵が、ひとコマや四コマ、そして進行役としても紙面に変化とわかりやすさを加えてくれています。

 編集からは、動物の基本情報を入れてもらうことと、できるだけ動物の子どもや赤ちゃんを入れてもらうこと、獣医さんなどの仕事がわかるよう要望しました。それらもうまくまとめてくれた、四人のチーム力がヒットのひみつだ思っています。

(新日本出版社 柿沼秀明)