
絵本から読み物へ、あこがれと共感
「なんでも魔女商会」シリーズ
あんびるやすこ 作
2003年11月~刊行
すでに絵本作家として知られていたあんびるやすこ先生との出会いは、画家さんのホームパーティーでした。
編集長とともにご挨拶をして、改めてアポイントをとり、絵本の依頼をしたのですが、先生は、以前から絵本だけでなく童話に対しての希望をお持ちで、温めていた企画をお話しされました。
あらすじ、構想を伺い、すぐに編集長も私もとてもおもしろいし、素敵な物語だと感じて「なんでも魔女商会」シリーズは始まりました。
いつも辛口の批評ばかり言う営業部員も表紙を見たとたん、「これはいい。こんな本を待っていたんだ」と好感触。
その結果一作目から取次、書店、読者の反応はよくて、すぐに重版になりました。
以来シリーズは現在まで二十六冊刊行されて、固定ファンもたくさんいます。初めの頃に読んでいた読者が社会人になって、書店員としてサイン会で会えた時には、みんなでとても感動しました。
子ども時代に読んでいた本は忘れない。まさにその通りでしたし、この本がきっかけとなって将来の夢がみつかったというお子さんもたくさんいます。
「なんでも魔女商会」にはいろいろなお店があるのですが、この物語の主人公シルクのお店はお客様の要望に応えてお洋服をリフォームするお店です。
このお店には本当にご用のある方だけが本当にご用があるときにだけ見つけられる魔法がかかっています。
ではなぜ人間のナナがこのお店にやってこれたのか、その謎は二巻目で明かされます。
誰もが持っている不安やコンプレックスや、人間関係の悩みは、お店にやってくるお客様自身の悩みでもあって、お洋服をリフォームしていく中で解決されます。
お説教ではなく、物語を通して誠実さ、本当の優しさなどに気付かされます。
卒業生に魔女商会に書いてあった言葉をしおりにしてプレゼントしたという学校の先生もいらして、そのヒントもあって、途中からキラキラメッセージカードも付録になりました。このカードもとても人気があります。
今までよりももっと面白く、読者の期待以上をめざしているあんびる先生は、シリーズだからと甘えたりせず、常に最高のものを生み出し続けています。
今年は夏に市川で作家生活三十年を記念して原画展がありますので、実物の原画も見ることができます。どうぞお楽しみに!