日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『冒険!発見!大迷路 海底大決戦』 原 裕朗

(月刊「こどもの本」2018年1月号より)
原 裕朗さん

迷路だけじゃない絵本

 新刊の『冒険!発見!大迷路海底大決戦』は巻を重ねて15巻め。最初の『海賊アドベンチャー』以来ひさびさの海ものです。この本の主人公はきみ(読者)。主人公になりきった読者が、無人島の秘密基地や水深2500メートルの深海や人魚の王国を訪ね、迷路のなかを歩き、さがしものをしながら、ユニークな仲間たちと問題を解決する冒険物語です。

 ぼくがこの本をつくる時に心がけている大切なことは3つ。
(1)迷路は徐々に難しく!
(2)かくし絵はていねいに。
(3)すべてのキャラクターを生き生きと。

 (1)は、誰でも最初から難しいとイヤになっちゃうでしょう? 初めは「簡単すぎる!」ってくらいやさしく入れるようにしているんです。

 (2)は、いちばん気をつかっていることです。背景にうまくとけこむようにすると、普通に本を見ているときには気づかない何かが、思わぬところにかくれていて、見つけたときにニンマリしちゃう。そして気づいたときに、はっきりそれとわかるように気をつけて描いています。「これ、わかんない」って言われるようなかくし絵はダメです。

 この本は、迷路とかくし絵だけの絵本じゃない。キャラクターと友達になって冒険を楽しむ本です。(3)はその秘密。小さなキャラクターの動き、表情、目線にもこだわって描いていますよ~。このこだわりがあるからこそ、子どもたちがキャラクターを応援してくれるのだと思っているし、この1冊で子どもたちの大切な時間を30時間はうばっちゃいますよ!という心意気でいます。子どもたちが一人で解いた問題を、お父さんやお母さん、友達に見せて「あそこにあるのに気づいてないな!」「あ、そっちに行くとゴールに行けないよ!」などと思いながら、そして、ちょっとハラハラドキドキしながら本と仲間を見守っているところを想像するとつくっているぼくの気持ちと同じだよ!と言いたくなります。

 本はコミュニケーションのツール。おとなのみなさんも、ぜひ一度本を開いてみてください。家族や仲間に会話がいっぱい生まれますよ!

(はら・ひろあき)●既刊に『ねこのミルとねずみのチムニー』(森山杳里子/絵)、『こびとの森の12にん』など。

『冒険!発見!大迷路 海底大決戦』
ポプラ社
『冒険!発見!大迷路 海底大決戦』
原 裕朗&バースディ・作・絵
本体1、300円