日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『よるのせかいを のぞいてみよう』 アナ・ミルボーン・文 シモーナ・ディミトリ・絵 青木信子・訳

(月刊「こどもの本」2015年10月号より)

青木信子さん

夜の世界を探検しよう

アナ・ミルボーン(文)とシモーナ・ディミトリ(絵)のコンビによる「のぞいてみよう」シリーズの三作目。このふたりの作品の魅力は、なんといっても繊細なタッチとやさしくてかわいらしい色彩の絵、それに、小さな子ども向けながら、きちんと説明しているところです。私自身、ロンドンの本屋さんで、他とは違う雰囲気を持つ、このかわいらしい色使いの絵本に目を惹きつけられました。
前作の『どうぶつえんを のぞいてみよう』と『どうぶつの おうちを のぞいてみよう』で動物たちの〝昼間の世界〟を探検したあと、『よるのせかいを のぞいてみよう』では、幼い子どもたちが日頃、おそらくあまり目にすることのない、〝夜の世界〟を探検します。自分たちがお家に帰ったあとの、〝夜の外の世界〟はどんなふうなのかなぁ、という小さな好奇心を満たす絵本です。
夜が早い小さい子どもたちは、昼間に活動する虫や鳥などを見ることはあっても、夜行性の虫や鳥などを目にしたり、それらについて知ることはなかなかないでしょう。また、パン屋さん、鉄道や道路の工事をする人たち、夜行列車や夜行バスの運転士さんなど、私たちの生活を支えるために〝夜中に寝ないで働いている人たち〟のこととなると、なおさらだと思います。この絵本で夜の世界を探検しているような気分になってもらえたらと思います。そして、この絵本でとりあげられているフクロウやコウモリ、キツネやネズミ、街路灯に集まる蛾の話から、ほかの夜行性の動物や昆虫のことなど、さらに探検の範囲を広げて親子で楽しんでもらえたらいいなと思います。子どもが眠る前のひととき、読み聞かせてあげて、大人も一緒に小さな子どもの目線で夜の世界を探検してみてはいかがでしょうか。本の大きさも重さも小さな子どもの〝手に余らない〟サイズ。読み聞かせてあげる大人にとっても手が疲れないサイズだというのも魅力です。

(あおき・のぶこ)●既訳書に『どうぶつえんを のぞいてみよう』『どうぶつの おうちを のぞいてみよう』。

『よるのせかいを のぞいてみよう』
大日本絵画
『よるのせかいを のぞいてみよう』
アナ・ミルボーン・文 シモーナ・ディミトリ・絵 青木信子・訳
本体1、300円