
おじいちゃんもことわざも「転ばぬ先の杖」
子どものころ、母にしかられてふてくされていると、よく父が故事ことわざでたしなめてくれました。それは「良薬は口に苦し」だったり、「継続は力なり」だったり。ことわざだと自分の非を突かれても、不思議とすんなり腑に落ちました。
ことわざの語源は「言(こと)の業(わざ)」。語源由来辞典によれば、漢字には「すっきりと形よく言い切った言葉」、「形よく道理が通った言葉」という意味があるそうです。「形よく」というのに頷けます。
ことわざは平安時代には既にそのようなものがあったという記録があるそうですが、昔も今も人は同じようなことで、痛い目にあったり、奮起したりしていたのだと思います。私は子どもを出産するときに、改めて「案ずるより産むが易し」の言い得て妙に、大昔から脈々と続く命の営みを、すべての
母親と共有した思いがしました。ことわざにはそんな普遍性があるから、説教として引き合いに出されても客観的に受け止められるのかもしれません。
前置きが長くなりましたが、この『いわんこっちゃない』を創るにあたり、出版社からは最初に「だからいったでしょ」というキーワードを提案されました。でも、これは我が家の子どもたちにしてみても、聞き飽きて耳が痛い台詞。呆れるほど繰り返し注意されることは子どもにとっても切ないものです。そんなときに、ちょっと離れたところでいつも見守ってくれるおじいちゃん、おばあちゃんの存在は救いです。「だからいったでしょ!」と小言を並べ立てるのではなく、「いわんこっちゃない」「自分も同じことを言われてきた」とたしなめられると、すっと素直になれるのではないでしょうか。そんなことわざみたいな、おじいちゃんとぼくのやりとりを通して、先人達から学ぶこと、また、ことわざというウィットに富んだ言葉の芸術の面白さを感じてもらえたら嬉しいです。ただし、子どもたちが繰り返しやらかしてくれることへの改善にはつながらないことをご了承ください!
(スギヤマカナヨ)●既刊に『おまかせ!ヨーチェンジャー』『どんぐりころころ おやまへかえるだいさくせん』など。
少年写真新聞社
『いわんこっちゃない』
スギヤマカナヨ・作
本体1、400円