日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『どうぶつがすき』 なかがわちひろ

(月刊「こどもの本」2012年1月号より)
なかがわちひろさん

大きな夢の小さなはじまり

 ドリトル先生やターザンに憧れ、アフリカに行って動物たちと仲良くなりたいと胸をときめかせる。

 そんな子どもらしい夢を一途に追ってチンパンジーの研究を始めたのがジェーン・グドールです。

 ジェーンはチンパンジーが道具を使うことを発表して世界中の人類学者を驚嘆させました。当時、人間の定義は「道具を使うサル」。チンパンジーも道具を使うなら人間をどう定義すればよいのかと大騒ぎになったのです。

 このときジェーンは、まったく無名、しかも高卒の二十代女性。

 チンパンジーを驚かさないようにと武器をもたず、ジャングルに一人きりで毛布にくるまって何日も観察を続けるジェーンを、チンパンジーたちは「白いサル」として受け入れ、やがて身体に触るのを許すほどになりました。

 その結果わかったのは、チンパンジーの知能や複雑な社会性、濃密な愛情表現から破壊を招く闘争心までが人間に酷似していたことです。ジェーンはチンパンジーたちに人格を認めます。

 ところがチンパンジーの森の暮らしは人間界の紛争や開発、貧困などによって、みるみる壊されていきました。するとジェーンは地球環境に目を向けて幅広い保護活動に身を投じました。

 七十代後半になった今も世界各地で講演を行い、とりわけ子どもたちの環境意識を高めることに努めています。

 特筆すべきはジェーンの活動がつねに希望を原動力としていることです。

 絶望的な状況にあっても怒りや憎しみが何も産まないことを一貫して主張し、若い世代に達成感と喜びを手渡していくことを重んじるのです。

 それは、小さな夢が大きな夢にふくらむ力を彼女自身が知っているから。 ジェーン・グドールの伝記は色々ありますが、この絵本は変わり種です。

 ジェーン・グドールが何者かを知らずに読むと、最後にきっと目が点になりますよ。すでに知識のある読者のためにも新しい情報が盛りこまれ、奥行きの深い本です。それにとても美しい。

 さすがはパトリック・マクドネル!

●既刊に『天使のかいかた』『かりんちゃんと十五人のおひなさま』『カモのきょうだいクリとゴマ』など。

「どうぶつがすき」
あすなろ書房
『どうぶつがすき』
パトリック・マクドネル・さく
なかがわちひろ・やく
本体1,500円