
私の中の子どもたち
今回の「いちねんせいの1年間」シリーズのご依頼をいただいたときです。小学一年生の一年間の出来事を題材に子どもたちの心の物語を紡いでいくという企画と、六人いる編集者が一人一冊ずつ、つまり編集部をあげてこの企画に取り組むという熱意に、私は作家として「書いてみたい」と思いました。
しかし、その時点で、すでに二十冊あまりの出版予定があり、「お引き受けしても、いつ取りかかることができるのか」という状況でした。そのため、とりあえず全体構想を立て、書くことができるのかどうかを考えてみることにしました。するとどうでしょう。次々と主人公の子どもが現われ、学校を舞台にいきいきと動きはじめたのです。そうです。どうやらその子たちは、私の中で「いつ書いてくれるの」「ぼくらの出番はまだかな」と、作品に登場することを待っていたらしいのです。私は、その子たちの心の動きを追いながら十作ほどアイデアをまとめ、その中から六作を選んで書き下ろしました。
この『いちねんせいになったから!』は、「いちねんせいの1年間」シリーズのトップバッターです。
子どもたちが期待と不安に胸をふくらませる入学式。主人公の「たきのりゅうたろうくん」は、「いちねんせいになったから、ともだちひゃくにんできるかな」、「どうすればひゃくにんできるかな」と考え、想像をふくらませていきます。それも、ものすごくです。ここだけの話ですが、りゅうたろうくんは、まるで子どものころの私、そして子どものころから今もあまり変わらないでいる私のようなのです。田中六大さんが描いてくれたりゅうたろうくんとかおりちゃん。さて、友だちになった二人は、これからどんな小学校生活を送るのでしょうか。楽しみです。
「いちねんせいの1年間」では、いろいろな学校を舞台に、授業参観、プール、運動会、遠足、進級と、様々な場面で、それぞれの主人公となる私の中にいた子どもたちが登場します。
どうか、ご期待ください!
(くすのき・しげのり)●既刊に『あっ!みーつけたっ!!』『まんてんべんとう』『ぼくのジィちゃん』など。
講談社
いちねんせいの1年間
『いちねんせいになったから!』
くすのきしげのり・作
田中六大・絵
本体1,400円