日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私がつくった本62
佼成出版社 鈴木亜紀

(月刊「こどもの本」2015年3月号より)
ほしいもマン

ほしいもマン
あきやまただし/作・絵
2014年9月発行

『はなかっぱ』や『たまごにいちゃん』、そして弊社発行の『なめれおん』など、魅力的なキャラクターを数々生み出している、あきやまただし先生。次回作を心待ちにしていたところ、ついにラフが届きました!

 あきやま先生のラフは、実際の絵本を四分の一ぐらいに縮小したサイズで、とてもかわいいのです。わくわくしながら手にすると、タイトルは『ほしいもマン』。干しいもが主人公ではありませんか!

 私事ですが、わたくし、干しいもが大好物です。子どものころ、いつも干しいもをかじっているので、家族から「いもねえちゃん」と呼ばれていました。

 さっそく読み進めてみると、とてもおもしろい!そして、深い意味が込められていました。

 おいもくんが野原を歩いていると、ぶたさんたちが大ゲンカをしているのを発見。おいもくんがケンカを止めようとしても、はじきとばされて相手にされません。「こうなったら、あれしかない!」。おいもくんは「ほし」(星)のバッジを胸につけると、「ぴかっとへんしーん!」。体からシューーーーッと蒸気を出して、みるみるしぼんでいくのです。

 ヒーローと言えば、一般的に変身すると格好良くなったり、強くなったりします。でも、ほしいもマンは逆です。しわしわになり、目もショボショボのおじいちゃんになってしまうのです。そして、ケンカをしているぶたさんたちの真ん中に、「どっこいしょ」と座り込みます(笑)。これでは、ぶたさんもはじきとばすわけにはいきません。

 そして、ケンカのわけを、ぶたさんたちがスッキリするまで、「ほうほう、ほうほう」と相槌を打ちながら、とにかく聞いてあげるのです。

 私はラフを読みながら「傾聴」という言葉を思い出しました。傾聴とは、カウンセリングなどで大切にされている、相手の話を聞く態度のことです。ポイントは、自分が聞きたいことでなく、相手の話したいことを肯定的に聞くこと。そうすると、相手が自分自身で問題に気が付いて、解決法を見出していくのだそうです。

 すごい! ほしいもマンは、傾聴の達人ではありませんか。

 あきやま先生に、「出版させてください!」と、すぐにお返事したことは言うまでもありません。

 私もそうですが、子育て中のお母さんは、ついつい、子どもの話をじっくり聞けなかったり、ケンカを強引にやめさせたりしてしまいます。そんなとき、ほしいもマンみたいに、「ほうほう、ほうほう」と話を聞いてあげられたらどんなにいいでしょう。

 いつか、ほしいもマンのようなお母さん(いも母ちゃん?)になりたい。今、そう思っています。