
お手伝いで豊かな日々を
私は、このところずっと「お手伝いは生きる力を育む」というメッセージを、本をはじめ、さまざまな場で伝える活動をしています。「お手伝い塾」という親子の体験の場、幼稚園から高校までの親御さん向けの講演会など、全国に出向いていますが、この数年で、とくに「お手伝い」への関心が高くなっていることを感じます。
新学習指導要領の中心にも据えられている「生きる力」は、日々の生活や家族関係の体験から育まれる。勉強だけしていても、この厳しい時代を生き抜く力が備わるものではない。そんな感覚が親には広まっているようです。
とはいえ、親として具体的に何をさせればいいのかは、誰も教えてくれません。それに、幼稚園や学校ではお手伝いの宿題も出ます。宿題に出るからには大切なことなのだろうけれど、さて、親としては戸惑いもするわけです。いまの親世代は、すでに核家族化と都市化のなかで育っています。自分がしてこなかったから、どう伝えればいいかわからないのでしょう。
今回、出版した絵本は、そんな親と子どもがいっしょに読みながら、「こうやればいいんだね」と楽しみながらやってみたくなるように、と工夫しました。親との日々の暮らしの中で、とにかく手と身体を動かし、自分のことを自分でし、家族の役に立つことで、たくさんの「生きる力」のモトが、子どものなかに育まれるのだと思います。
私は、多くの親御さんからお手伝いの教え方をきかれますが、質問には必ずこう答えます。家庭は、学校の授業とは違います。「みそ汁の作り方」を材料の準備から始めて完成するまで、一気に教えなくてもいいんです。親の手がふさがっているとき、「かつおぶしをこしてちょうだい」と頼む。宅配便が来て、途中で台所を離れるとき、「お願い、おみそを入れて、味をみておいて」と頼む。親が誰かの手をあてにしたいときに、断片でいいから頼めばいい。すると五年十年経つ中で、自然に作り方が身についています、と。
この絵本が、親子の豊かな日々の第一歩になることを願っています。
(たつみ・なぎさ)●既刊に「マイルール自立のすすめ」シリーズ(全5巻)、『片づけられない親のための幸せの生前整理』など。
金の星社
『おてつだいの絵本』
辰巳 渚・作
すみもとななみ・絵
本体1,400円