
足もとにある小さな世界
小さな頃から、虫を見るとつい立ち止まって、じーっと何十分でも見てしまう、そんな子でした。大人になってもそれは変わらず、庭先で虫を見ると、ついつい話しかけたりして、通りがかりの人に変な目で見られたりします。炎天下の中、アリの行列を見ていて熱中症になりかかったときは、さすがにこれはまずい、と思いました。それでもやっぱりやめられない。そのくらい、おもしろいんです。虫の世界!
卵や幼虫を運ぶアリたちの必死な様子。棒で妨害しても、彼らは運ぶのをやめません(もちろん、その後はおわびに砂糖をさしあげます)。
生まれたばかりのくせに、いっちょまえにカマをふりかざす子カマキリ。指でちょんとすれば絶対にこっちの勝ちなのに、子カマキリは自分の勝利を確信して、カマをふりあげてます。彼のプライドを傷つけないように、そのときはこちらが退散してあげます。
庭のパセリに毎年やってくるキアゲハの幼虫。見つけると、もうおっかさんの気分になって、それは大事に育て上げます。これまで、推定二十匹以上のキアゲハが飛び立っていきました。
こんな調子なので、石をひっくりかえしてダンゴムシがうじゃうじゃしているのを見ていると、ぞくぞくわくわくします。大きいの、小さいの、まだ白い赤ちゃんダンゴムシ。彼らは家族なんだろうか、それにしてもいっぱい産んだなあ、とか思いめぐらすうちに、わたしの頭の中にひょっこり現れたのが、股旅姿のダンゴムシだんごろうでした。情に厚くて、涙もろい。まっすぐでやさしい、家族思いのだんごろう。行く先々で出会うおかしな虫たち。彼らはみーんな、わたしやあなたの足もとにいる小さな虫たちです。目をこらせば、彼らの生きている悲喜こもごもが見えてきます。そこには人間顔負けのドラマがある。小さな虫でも、彼らは精一杯生きていて、わたしたちとなんら変わらないのです。
旅するだんごろうの、出会いと冒険のお話で、足もとの小さな世界に目を向け、彼らの命を感じてもらえたらうれしいです。
みおちづる●既刊に「少女海賊ユーリ」シリーズ、『ドラゴニア王国物語』『なみだあめ』など。
鈴木出版
『ダンゴムシだんごろう2〜たびの空〜』
みおちづる・作
山村浩二・絵
本体1,200円