
たがやす人たちと出会う
滋賀県の米農家さんとの出会いがこの絵本の始まりでした。その若手農家さんがボクを小さな田んぼへ連れていってくれました。彼が田んぼの泥のなかに手を入れ、なにかをつかみ、ボクにそれを見せてくれた時のことです。
「チャンキーさん、見て下さい。どじょうです。このどじょうや、カニや生き物たちがここで暮らせる土にするために数年かかりました」そう言う彼の笑顔がとても印象的で、これはきっと物語になると思ったのです。
「ボクが小さい頃、このあたりの田んぼにも生き物がたくさんいたし、それを見に子どもがあつまっていました。でも最近、ここではそういう光景を眼にすることが少なくなりました……」彼はこの気づきから無農薬の田んぼを作りはじめたのだそうです。
滋賀県の風景は「日本の田舎」がまだ残っています。水もおいしいし、土だって元気でしょう。できることならこの風景がこの先も残って欲しいと思います。農家さんの現状も厳しいと聞きます。だからこそ、農家さんがやりがいを持って仕事をできる環境になればと思います。
ここ数年、ボクはお仕事で地方へ行くことが増えました。イベントを主催される方と会うと感じるのは、みなさん自分の暮らす町、島、地域の素晴らしいところをボクに紹介してくれることです。長く住んでいる人が見逃している、良いところを若い人たちがおもしろがっているのがわかります。
地方はどこも過疎化が進み、若い人が少なくなっているのが現状です。大きな問題です。それでも自分たちの力でここを楽しくしていきたいとイベントを開催しています。そういう人たちを見るとボクは「たがやしてんなあ〜」と感じるのです。
『たがやせ!どじょうおじさん』はさまざまな場所で「たがやす人たち」を応援する絵本です。いずれ誰かにバトンを渡すその時がくるまで、今はたがやすのです。
「たがやせ! たがやせ! ちからあわせて そーれ そーれ!」
(ちゃんきー・まつもと)●既刊に『ちんどんやちんたろう』『こけしのゆめ』(以上いぬんこ/絵)など。
あかね書房
『たがやせ!どじょうおじさん』
チャンキー松本・さく
本体1,300円