日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『はしれ ディーゼルきかんしゃ デーデ』 すとうあさえ

(月刊「こどもの本」2014年8月号より)
すとうあさえさん

とにかく、伝えたくて

 二〇一一年三月二十七日の朝、テレビで、「被災地、福島へ 燃料を運べ」というニュースを見ました。古いディーゼル機関車が全国から八台新潟に集められ、十両の燃料タンクをひっぱって、磐越西線を郡山まで運ぶという内容でした。

 今はあまり活躍する機会がないディーゼル機関車。大荷物をひっぱって山の線路を走れるかしらと、ドキドキしながら見ていたら、雪と錆のために車輪がすべり、坂を上れず立ち往生してしまいました。すると小さなディーゼル機関車が助けにきて、後ろから押し、無事に坂を上りきり、燃料を郡山まで運ぶことができたのです。

 よかったー。ほんとに、よかった。

 私は見終わったあと、感動でいっぱいになり、「絵本にして子どもたちに伝えたい」と思いました。

 そして、その日から十七日後、私は編集者さんと新潟、郡山に取材にいきました。まだ燃料輸送のまっ最中でしたが、一番列車の運転士さんや駅長さん、現場の方たちに会うことができました。お話をしていると、なんとしても福島へ燃料を運んであげたいという皆さんの熱意がひしひしと伝わってきました。

 近くで見るディーゼル機関車は、大きくて、音とにおいもすごくて、迫力満点。運転士さんは、機関車に「いくぞ!」「やった!」などと話しかけるそうです。まさに相棒。その話を聞いて、ディーゼル機関車を擬人化して書くことに決めました。

 この輸送で郡山へ運ばれた燃料は、タンクローリー一〇〇〇台分。その時に活躍したディーゼル機関車のうち、今残っているのは、デーデのモデルになった機関車だけで、あとは廃車になったそうです。老骨にムチ打って、頑張ってくれてありがとう。

 私はあの日を忘れない。

 そしてあの時、頑張ってくれた大勢の人たちやディーゼル機関車に感謝をこめて、これからも「デーデ」を読み語っていきたいと思います。

すとうあさえ●既刊に『ざぼんじいさんのかきのき』(織茂恭子/絵)、『タネオがきた』(福田岩緒/絵)など。

「はしれ ディーゼルきかんしゃデーデ」
童心社
『はしれ ディーゼルきかんしゃ デーデ』
すとうあさえ・文
鈴木まもる・絵
本体1,400円