日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
「スイッチ!」シリーズ 神戸万知

(月刊「こどもの本」2014年7月号より)
神戸万知さん

虫が苦手な人も、ぜひ読んでもらいたい

 この「スイッチ!」シリーズを初めて手に取ったとき、まず、虫のラインナップがあまりに斬新でおどろきました。

 ごくふつうの発想であれば、カブトムシ、クワガタ、トンボ、チョウなど、人気があり、好感度も高くて、一般受けしそうな種類を並べそうです。

 しかし、作者スパークスが選んだのは、クモ、ハエ、バッタ、アリ、ガガンボ、ゲンゴロウなのです。

 そして、記念すべきシリーズの第一巻、第二巻、クモとハエ!

 クモはいくら益虫とはいえ、見た目のグロテスクさから忌み嫌われがちですし、ハエといえば、ゴキブリと並んで嫌われ虫の代表格です。(じつをいうと、作者はゴキブリも入れたかったのではないかと推測しています。それはさすがに、反対されそう……。)

 正直なところ、わたしは全般的に虫が苦手です。おそらく、虫と接したときの反応は、主人公のひとり、虫嫌いのダニーと同じでしょう。

 ですが、この本を読んで、クモやハエに対する見方が変わりました。

 なんて見事な身体能力! すごい! うらやましい! かっこいい!

 ここで初めて、作者がクモとハエをトップバッターに選んだ理由が見えてきました。

 人間の勝手な都合で嫌われる生きものにも、すばらしい能力・資質があり、同じ「命あるもの」として等しく重く、大切なのだと訴えたいのでしょう。

 表面的にはコミカルで軽めの雰囲気を保ちつつ、なんとも志の高い作品ではありませんか! 

 また作者は、虫だけでなく、害獣扱いを受けることの多いドブネズミについても、彼らの名誉も回復すべく、たびたびピンチに陥る主人公たちを救いだす役割を与えています。

 人間という立場ではなく、それぞれの生きものの視点から世界をながめると、おどろくほどたくさんの新しい発見がありました。

 虫が苦手なかたも、ぜひ先入観を持たずに、読んでみてください。

 虫っておもしろいですよ!

(ごうど・まち)●既訳書にE・ロッダ「ロンド国物語」シリーズ、M・マーケッタ『アリブランディをさがして』など。

「スイッチ!(SWITCH)」シリーズ(既刊6巻)
フレーベル館
「スイッチ!(SWITCH)」シリーズ(既刊6巻)
アリ・スパークス・作
神戸万知・訳 舵真秀斗・絵
本体各800円