
スマッシュ!(全8巻)
横沢 彰/作、小松良佳/絵
2011年4月〜2014年3月
二〇一一年四月から刊行を始めた「卓球部」シリーズが、この三月に完結(全八巻)します。作者は横沢彰さん。絵を担当してくださったのは小松良佳さんです。東日本大震災の直後、お互いの安否を気遣いながら、小松良佳さんとラフのやりとりをしたことを覚えています。
横沢彰さんは、大学在学中の一九八二年『まなざし』(新日本出版社)でデビューされました。入社まもない新人編集者だった私は、横沢さんを担当していた先輩編集者にくっついて、この本の出版記念会に出席しています。手作りの心のこもった集まりでした。横沢さんは、翌年、本作で日本児童文学者協会新人賞を受賞しています。
東京の大学を卒業後、故郷の新潟県糸魚川で中学校の教師となった横沢さんは、それから今日まで、現場で子どもたちと向き合いつづけています。
私が初めて横沢さんの担当として仕事をしたのが一九九九年刊行の『いつか、きっと!』です。一九八四年に二作目を出版されて以来、じつに十五年ぶりの出版でした。現場で教師をつづけながら「書く」というのは、並大抵のことではないのだと思います。
「卓球部」シリーズの一巻目に当たる『ふぁいと! 卓球部』の原稿を私に預けてくださったのは児童文学作家の後藤竜二さんでした。二〇一〇年の年明け早々「傑作です!」というコメント付きで後藤さんから原稿が送られてきました。私は、単発ではなくシリーズにしたいと横沢さんに相談し、全三巻の予定で企画提案をいたしました。
横沢さんは、思春期まっただ中の中学三年生の時に、後藤竜二さんの作品『ぼくらははだしで』と出会ったそうです。その年代特有の大人への反発や激しい自己嫌悪に苦しんでいた横沢さんは、思いのたけを手紙に書いて作者の後藤竜二さんに送ります。そして、やがて後藤さんに読んでもらうことを夢見て小説を書き始めるのです。以来、二人の熱い信頼関係は三十年余に渡ってつづきました。
しかし、この作品の育ての親であり、出版を後押しした後藤竜二さんは、その年の夏、突然の病に倒れ、帰らぬ人となりました。後藤さんに、単行本になった「卓球部」物語をお見せできなかったこと─かえすがえすも残念です。横沢さんは、五巻目の巻末に、「ずっと励ましてくださった後藤竜二さんにこのシリーズを捧げます」と書いておられます。
後藤さんが「傑作です!」と太鼓判を押した横沢さんの作品がいよいよ完結します。子どもたちと日々格闘をつづける横沢さんが、これからどんな作品を生み出してくださるのか、後藤さんの志をどんな風に受け継いでいかれるのか、私も及ばすながら見守りたいと思います。