
「すごいぞ!ぼくらのからだ」シリーズ 誕生秘話
2011年の暮れ、メディカ出版という医療系出版社が絵本を作りたいと言ってきた。絵本のプロジェクトチームをつくり、グループ会社である保育社からシリーズものとして出版したいとのこと。面白いと思った。
話を聞いた時に、まず、思い浮かんだのは「生活科学絵本」というぼくが勝手に作ったジャンルがあって、このジャンルで「からだ」に関することを書いたらいいんじゃないかってこと。
今までに作ったのでは『歯がぬけた』『へそのお』(PHP研究所)の2冊。科学のことなんか、なーんにも知らないぼくでも、生活に科学のことが深く関わっているらしいことは、わかる。科学の知識が子ども級のぼくだからこその絵本が作れる。
ぼくは、話の翌朝『あしってエラい!』というテキストを書いて送った。打合せの時に思い浮かんだイメージが冷えて固まらないうちに、一気に書いた。
足の絵本があるなら、手の絵本も必要だ。
手でしょ? 手といえば…と思い出したのがもう33年も前のこと、手の写真絵本のアイデア。カタログ的に、手の色々を写真で見せたら面白いと思ったのだ。友達の友達に写真家がいた。すぐに紹介してもらって、プランを話した。彼はどんどんいい写真を撮っては送ってくれた。しかし、ぼくのプランは多岐にわたっていたので、撮っても撮っても追いつかない。だんだんと疎遠になり、フェイドアウトしていった。
そんな時に、今回の絵本シリーズの話がきた。ぼくは、手の写真絵本のプランを編集者に話した。オッケイが出た。33年前のアイデアが、長い年月を経て、ここに実を結び、一昨年、誕生した孫と手をつないだ写真で、その絵本を締めくくった。
既刊は『ぼくの手 わたしの手』『たべものたべたら』。近々『ほね・ホネ・がいこつ!』『あしってエラい!』『こころとしんぞう』と続く。
このシリーズが自分のからだの不思議、すばらしさに気づくきっかけになったら、うれしい。
(なかがわ・ひろたか)●既刊の創作絵本に『なんでやねん』など、翻訳絵本に『かいぞくはパンツがだいすき』など多数。
保育社
「すごいぞ!ぼくらのからだ」(既刊2冊)
中川ひろたか・作
本体各1,200円