日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私がつくった本48
光村教育図書 吉崎麻有子

(月刊「こどもの本」2013年9月号より)
3さいからのユーモアえほん ハブラシくん

『ぼく、いってくる!』
マチュー・モデ/作
ふしみみさを/訳
2013年6月刊

 ことりのぼうやが、決意表明。

「ぼく、いってくる!」

 すると、ページをめくるたび、家族やともだちが、餞別の品をわたしてくれます。でも、どこに行くのかは、明かされません。もらったもので両手がふさがり、重装備となったぼうやが、向かった先は……。

 他愛のないオチに、「なあんだ」と笑わずにはいられないフランスの絵本です。弊社より刊行の『れいぞうこに マンモス⁉』の画家による新刊でした。このおもしろさを、日本の子どもたちにもたのしんでほしいとおもい、刊行することになりました。

 
 海外の絵本は、原書をもとに編集します。本書の原書はボードブックでしたが、日本では上製本で刊行することに。そこで、デザイナーさんに、原書にはない見返しと扉をつくってもらいました。

 原書のデザインを変更するときは、原書の出版社や作者の許可をとり、事前にデザインを見てもらいます。海外の出版社とのやりとりで気をもむのが、返信の期日です。祝日やバカンスとかさなり、時間がかかってしまうことも、しばしば。今回も、返信をいただけたのは印刷会社へ入校データをわたす前日でした。

 待ちに待った返信のメールには……画像が添付されていました。なんと、扉のイラストを変えてほしいとのこと! 間に合わなくはないけれど、ギリギリすぎるこのタイミング。しかし、いちばん悩んだのは、変更希望のイラストが、ストーリーに合っていないのでは、とおもったことでした。

 作者から届いたイラストは、巣の中に、ことりのぼうやがいるものでした。そのぼうやの表情が引っかかってしまったのです。本書は、表紙、また本文のはじめから、ぼうやが覚悟を決めた、りりしい(?)顔をしています。きりっとしたまゆげがあるのです。ですが、作者からのイラストは、まゆげがない! それがどうしても、ストーリーに合わないようにおもってしまいました。

 そこで、無理を承知でお願いをしました。扉のイラストを変えるのであれば、ぼうやにまゆげがほしい、そのイラストは翌朝までにほしい、と……。幸いなことに、作者はこころよく応じてくださり、無事、まゆげ付きのイラストで入校することができました。

 
 原書があるといえども、海外絵本の刊行は、一筋縄ではいかないことが多くあります。それを乗り越え、日本の子どもたちに、海外のすばらしい作品を届けていきたい。この決意表明(!)をもって、本書の紹介の結びとさせていただきます。