
楽園の島で
今まで、世界のあちこちを旅してきました。その多くは、辺境地と呼ばれる、熱帯雨林、サバンナ、砂漠などです。行き先は、いつも風変わりな生きものがたくさんいる場所になってしまいます。
いちばん長く通ったのは、東アフリカのケニアです。八年間で延べ、二年四か月現地にいたことになります。ナショナルパークでは、自炊ロッジを借りての長期滞在。そこでの体験は感動の連続でした。
セピア色の草原でライオンのメスに遭遇。草の中に隠れているライオンに、直前まで気づきませんでした。そのとき、背中がゾクッとしたのを覚えています。そこには、いつも動物園で見ているライオンと、まったく違う生きものがいたのです。
あちこち旅しているうちに、たくさんの生きものたちを自然の中で見てみたい。そんな願望がますます強くなりました。
しかし、それはかなわぬ夢。いやいや、もし、ジャングルや草原や氷の岩などが集まった島があるとしたら、その夢は、一気にかなうはず。子どもの頃に目をつむって空想していたような楽園の島。そんな島があったらどんなに興奮するでしょう。
子どもたちに、動物を見つけたときのワクワク気分を味わってほしい。そんな思いでつくったのが『どうぶつ島たんけん』です。夢のようなお話ですので、写真ではかなえられません。そこで、私が得意なペーパーカットで動物たちを切りとってみました。
どうぶつ島は、海のまん中に浮かぶ小さな島。富士山のような火山がそそりたっていて、モクモクと煙をあげています。帆船にのってやってきた船長は、きっと私自身なのでしょう。さあ、これからどんな出会いが待っているかお楽しみに。
この絵本を手にとった子どもたちが、動物園に行きたくなったり、熱帯雨林やサバンナの動物の夢を見てくれたら、とてもうれしいです。
(いまもり・みつひこ)●写真家、ペーパーカットアーティスト。既刊に『神さまの森、伊勢』『やまおやじ』など。
小学館
『どうぶつ島たんけん』
今森光彦・ペーパーカット・ことば
本体1,500円