
クルテクの作者が描く猫ワールド
「ぶさかわ~」前髪を切り揃えた、いわゆるおかっぱ猫。原書を見たとき、思わず口をついたのがこの言葉でした。挿絵は日本でもファンの多い「クルテク」のズデネック・ミレル。ミレルはクルテクのほかにも「しりたがりやのこいぬ」「コオロギくん」など、数々の人気キャラを手掛けています。『あおねこちゃん』も本国チェコのほか、各国で発売され、日本での紹介が待たれていたキャラのひとつでした。
さて、本作は他の猫と毛の色が違うあおねこちゃんが、仲間の力を借りて、周囲にうちとけていくお話です。見かけで判断することの愚かさや友情の大切さが描かれ、メッセージ性の高い作品となっています。けれどもただの教育絵本に終わらず、楽しく味わえる作品に仕上がっているのがミレル流。クルテクはいつも明るい笑顔で仲間を助け、困難も持ち前のユーモアで切り抜けちゃいます。そんな姿に子ども達は喝采する訳ですが、『あおねこちゃん』も、ゆかいな仲間達があおねこを盛りたてます。きっと子ども達はそんな仲間達の姿に共感を覚え、一緒になってわいわいエールを送ってくれることでしょう。子ども達に笑顔で読んでほしい、それが一昨年に九〇歳で他界するまで絵筆を握り続けたミレルの願いでした。
色調も心なごむお話にふさわしく、パステル色でまとめられています。日本語版の刊行に当たってミレル氏側がこだわったのがこのソフトな色合いでした。「繊細な色彩感覚を持った日本の読者にもきっと歓迎されるでしょう」
という訳で、原作者側も太鼓判を押す本作ですが、最後にやはり、すっとぼけた表情の猫達に一言触れずにはいられません。ほのぼのとした背景に溶けちゃいそうなあおねこちゃん、そして真っ黒のつんつん頭、カッパ頭、水玉柄のお友達トリオ。この個性派ぞろいの猫達がまた、いい奴らなのです!ちなみに他のミレルの作品同様、この絵本にもアニメ版があります。そちらは人間は登場せず、正真正銘の猫ワールド。ぜひ絵本と見比べてみて下さい。
(ひらの・きよみ)●既訳書にJ・トゥルンカ/絵『こぐまのミーシャ、サーカスへ行く』、同「ふしぎな庭」シリーズなど。
平凡社
『あおねこちゃん』
ズデネック・ミレル・絵
マリカ・ヘルストローム=ケネディ・原作
平野清美・訳
本体1,600円