日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『もったいない王国のさがしもの』 山本真嗣

(月刊「こどもの本」2013年6月号より)
山本真嗣さん

さがしもので、遊んで学んで

 二〇〇八年にさがしもの絵本「ピックとニックの冒険」シリーズの二作を六年掛かりで作画し出版した後、しばらく筆を休める期間を設けていました。するとある夜中に手持無沙汰からペンを握ると、絵本の構成がドバッと出て来て止まらず、一気に全てのアイディアとストーリー、世界観が固まりました。

 その後、そのスケッチを以前より声を掛けてもらっていたPHP研究所へ持ちこみ、二〇一二年五月から本格的に制作をスタートしました。

 これまでは本を見てくれた子どもたちにとにかくちっちゃくて可愛いメルヘンな世界を楽しんでもらえたら、と思い作画をしていました。しかし今回絵本を作るにあたってまず子どもたちに何を伝えたいかと考えた時に、普段から自分の心の中にある「ものを大切にする」という気持ちに辿り着きました。すると自分の思いと絵本という表現の場が繋がったのです。

 一時期、流行語になった「もったいない」という言葉を流行で終わらせない様に、物を大切にする気持ちを当たり前の事として子どもたちにも感じて欲しい。だけどそのメッセージが押し付けがましくならない様にさがしものという遊びと学びを絡めて楽しみながら感じてもらえる一冊に仕上げる事が出来ました。

 絵本作家として『もったいない王国のさがしもの』は三作目となるのですが、今回はテキストにも初挑戦しました。

 よく絵本を見て頂いた方から、「絵はデジタルなの?」「原画はもっと大きいの?」と聞かれるのですが、一筆一筆丁寧に面相筆を使って描いた水彩画で、絵本とほぼ同じ大きさで作画しています。是非、絵の世界観も楽しんで頂きたいです。

 子どもたちが普段の何気ない生活の中で「もの」と向き合う時に、この絵本の事を少しでも思い出してくれたら嬉しいです。

(やまもと・しんじ)●既刊に『ピックとニックの冒険』『ピックとニックの冒険2 不思議な星でさがしもの』。

「もったいない王国のさがしもの」
PHP研究所
『もったいない王国のさがしもの』
山本真嗣・作・絵
本体1,400円