
『おしりをしりたい』
鈴木のりたけ/作・絵
2012年11月刊行
お母さんとお子さんが、二人で書店内をぶらぶら歩いています。突然、お子さんがかけだして、一冊の絵本を手にしました。
「ママ、これ欲しい!」
その本の表紙には、なんと大きなおしりの絵。
お母さんは半分あきれて、思いました。
「こどもはなんで、おしりとかが好きなんだろう?こどもの目を引く表紙にしてるけど、どうせ中身もおふざけで、大したことないんでしょ。」
でも、こどもが欲しいというのをむげにも出来ないので、一応手にとります。そこで、オビの言葉が飛び込んできました。
「なぜおしりはプリプリしてるの?」
そんなこと、突然いわれても。咄嗟には答えは出てきません。でもなぜなんだろ? 裏表紙も見ました。
「おもしろくてためになるおしりのおはなし」
ためになる? こうなると、もう中味を確かめずにはいられません。パラパラとページをめくります。そこには、鈴木のりたけさんのあたたかい絵と、思わずクスッとしてしまうユーモアと、そして大人でも知らないおしりのひみつが描いてありました。
「これ、こどもも興味を持っているし、内容もちゃんとした知識が得られるようになってるのね。いい本じゃない。買ってあげよ。」
そして二人は、その絵本『おしりをしりたい』をもって、レジに向かいましたとさ。ちゃんちゃん。
以上、私の、「理想の売れ方」の妄想でした。
鈴木のりたけさんの描く絵本の世界は秀逸で、内容には絶対の自信がありました。ただ、テーマはおしりです。表紙を大きなおしりの絵にすることで、こどものつかみはオッケー、あとは大人にいかに拒否感なく、中味を見ていただけるかが大事だと思っていたので、そんな妄想を抱きながら、試行錯誤してオビのコピーを決めました。
ほかにも、内容やイラストについて、何回ものりたけさんと打ち合わせをさせていただきました。居酒屋で、カフェで、仕事場で、居酒屋で(あ、二回目!)、真剣におしりの話をする大の男二人は、まわりには奇っ怪にうつったことでしょう。ただ、何回も打ち合わせを重ねるうちに、作品の方向が見えてきたり、ひらめきがあったりしますので、それも編集者の大きな仕事のひとつ、ということにさせてください。
何はともあれ無事に発売でき、売れ行きも上々で、ただただ喜んでおります。読者のハガキには、絶賛の言葉と一緒に、私の妄想通りに買われていることが複数かかれてあり、心の中でガッツポーズをしながら、次作への活力としている次第でございます。