日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『よいこはもうねるじかん』 高畠じゅん子

(月刊「こどもの本」2013年4月号より)
高畠じゅん子さん

真夜中の創作

 隣で寝ている私を「うぁーあぁー」と、五カ月になったばかりの娘は、三時間〜四時間の間隔で泣き、起こしてくれていました。それは、二年も前の三月の事です。

「泣きたいのは私の方だよ」と呟きながら、娘を抱き寄せ、乳を含ませる日々。夜中に何回も寝ては起きてを繰り返すうち、寝付けなくなってしまうことも多かった私は、この時間を絵本創作にあてることにしました。こうして布団の上で夜な夜な考えできたのが、『よいこはもうねるじかん』です。

 絵本創作をはじめて、七年になるのですが、この絵本は、お話の道筋を順序立てて作った、というよりは、ふわふわと思いを巡らせるうちに、「できちゃった」という感覚に近いように思います。突拍子もない登場人物の数々が頭に浮かび、自分でも収集がつかないのではないかと戸惑いつつも、登場人物を頭の中で遊ばせているうちに、一つ、二つ、とアイディアが浮かびました。夜は、不思議な力を持っているのかもしれません。

 娘は、乳飲み子だったので、夜中に何度も起きていたのは当たり前なのですが、自分自身、物心がついた頃どうだったかというと、なかなか寝付けない子どもでした。「暗い=怖い」という本能的なこともありますが、寝ている部屋のドアから、廊下の灯りがスーっと延び、リビングから聞こえるTVや両親の話し声は、さっきまで自分が生活していた場所とは思えないほど遠く、子ども部屋もまた、昼間とは全く様相を変え、何が起きても不思議じゃないような空間に思えて、胸が高ぶる、そんな日も多かったように思います。

 今回、絵を高畠純先生が描いてくださることになり、ドキドキワクワクするような、夜の世界観が表現されていて、とても嬉しく思いました。

 最後に、この絵本はタイトルこそ『よいこはもうねるじかん』ですが、いささか読後は、覚醒!します。寝付かせたいお父さんやお母さんには、少々「⁉」な一面もあるかと思いますが、子どもさんと一緒に楽しんで読んでいただければ嬉しいです。

(たかばたけ・じゅんこ)

「よいこはもうねるじかん」
BL出版
『よいこはもうねるじかん』
高畠じゅん子・さく
高畠 純・え
本体1,300円