
時代活劇の魅力
『ごぞんじ! かいけつ しろずきん』は漢字変換すると『御存知! 怪傑白頭巾』。表紙を開けば、時代劇の始まり始まりー。
「時は江戸時代。人けのない街角に、突然子どもの泣き声が響きました。」(歯切れ良い渋いナレーション)
「わ〜〜〜〜〜〜ん!」(子役の声)
「恐ろしい化け物の影が二つ……。」と、やや勿体つけて。SE(ジャジャジャーン!)と同時に、画面いっぱいのタイトル「御存知! 怪傑白頭巾」テーマ曲スタート。チャンチャーラスチャラカチャラチャ…。映像は江戸の街並みから裏長屋で遊ぶ子どもたちへ。曲、終了。バタバタと草履の音。
「てぇへんだ、てぇへんだー!」
*「 」以外は私のイメージです。
にしても、よくこんな好き放題に書かせてもらえたよなあと思う。時代劇や落語に馴染みのない子どもたちが、果たしてこの世界観をわかってくれるのだろうか? と「待った!」がかかるのが常。
しかし嬉しいかな、意外や好評だったのだ。と、新刊でありながら自信満々なのは、実はこれ、月刊絵本として二〇〇七年に出ており、しかもオールリクエスト版として昨年再販されたと思ったら、すぐに市販化というラッキーな絵本だから。
ネットで検索すると、保育園の年中さんの劇として上演されたとか(白頭巾の他に、青頭巾、黄色頭巾、桃頭巾も登場!)、この絵本を読んだ子どもたちの間で、江戸言葉が大流行しているなんて記事も見かけた。かわいいだろうなあ。「てぇへんだ、てぇへんだ!」と駆け回る子どもたち。
江戸のべらんめえ調や歯切れのいい七五調は、私達日本人のDNAに刻み込まれているのか、すっと馴染んで心地良い。私も時代物の映画を見るようになったのは最近なのだが、何故かほっとするから不思議である。
そして絵の竹内通雅さんも、意外や時代物はこの絵本が初めて。ダイナミックで美しくユーモラスなツーガワールドが、魅惑の江戸時代にあなたを誘ってくれるはずである。
もとした いづみ●既刊に『おっとどっこいしゃもじろう』『がっこういこうぜ!』『ふってきました』など。
ひかりのくに
『ごぞんじ!かいけつしろずきん』
もとしたいづみ・作
竹内通雅・絵
本体1,280円