
「楽しい」って、深いこと。
書籍『たいせつなことは船が教えてくれる』の取材のため、コンテナ船に乗ったり、フィリピンの大学を取材したり……。
さまざまな言葉や価値観の人に会いながら、私は「楽しい」ということの深い意味を考えていました。
なぜなら、笑顔で働いている人々は、本当に楽しそうだったから。
それは、「苦痛がない仕事がある」という意味ではない。船の仕事は、その仕事が好きではない人にとっては、理解できない世界かもしれません。
まず、安全第一。そのためクルーには24時間のシフトがある場合があり、深夜でも、仕事の時間帯があります。
「ちょっと気晴らしに……」と思っても陸がない。急にスナック菓子が食べたくなっても、コンビニにも行けない。
でも。
クルーは、ある時には、ワイワイと釣り糸をたらして魚を釣ります。休憩時間にさばいて、いちばん新鮮なところをいただきます! わさびやショウガは、チューブのものを積んでおくのです。
なにもかも限られている船の上。
そこで学んだ「楽しい」とは、ないものに不平を並べるのではなく、あるものの中で工夫して満足を得ること。
安全であること。誤解や事故を防ぐために、積極的に声をかけ合うこと。
時には、真剣に話し合うこと。
そうやって築かれた安全や真剣さがあるからこそ、ホッとして笑えること。
「『楽しい』ということは、実はとても高度なことではないか?」
深く深く、さらに深い、自分たちで責任を持って作り出した「楽しい」という状態。そこには、私たちが生きる上でいま、学ぶことが山ほどありそう。
そんなエッセンスがぎゅっと込められた当書は、海の世界からの、智慧の贈りものに満ちています。
(ふじさわ・ゆづき)●既刊に『夢をかなえる人の手帳術』『未来日記』『「なりたい自分」になる魔法の教科書』など。
金の星社
『たいせつなことは船が教えてくれる』
藤沢優月・著
本体1,400円