日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私がつくった本41
佼成出版社 藤本欣秀

(月刊「こどもの本」2013年1月号より)
バナナンばあば

『バナナンばあば』
林 木林/作、西村敏雄/絵
2012年8月

 この絵本を作り終えたころ、弊社のホームページ用に、西村先生からこんなコメントをいただきました。

「『一番好きなフルーツは何ですか?』と聞かれて『バナナ!』と答えている人に僕は今まで会ったことはありません。僕も一番好きなフルーツはマンゴーです。

 でも一番よく食べているフルーツは何かと言えば、僕の場合バナナです。」

 うーん、たしかに。バナナがフルーツの王様だった時代は過去のものとなり、いまバナナの置かれているポジションは「安くて、美味しくて、栄養価の高い、一番身近なフルーツ」といったところではないでしょうか。
 

 そんなバナナを主人公にした絵本が、この『バナナンばあば』です。

 最初、林先生から絵本のダミー(林先生のイラスト付き!)をお見せいただいたとき、バナナをおばあちゃんに、しかも三姉妹にしたその設定に心をわしづかみにされました。

 今まで気づかなかったけれど、なるほどバナナの緩やかなカーブはおばあちゃんの腰の曲がり方に似ているし、シミがあるところも似ている。しかも、そのシミは「シュガースポット」と言って、バナナが熟して美味しく食べられる目印だと言うではありませんか。そのお話を林先生からお聞きしたときに、私の中で「シミのあるバナナ=人間的に深みのあるおばあちゃん」のイメージがピタリとはまったのです。

 この絵本に出てくるおばあちゃんバナナは、自己主張が強く、冒険心も旺盛、身に降りかかるピンチもとっさの知恵で乗り切るパワフルなおばあちゃん。でも、根はあたたかく、愛に溢れた、やさしいおばあちゃんです。そんな主人公の姿を、西村先生がキュートで人間味のある、魅力的なキャラクターにしてくださったときの喜びは、いまも忘れられません。

 絵本の共作としては、これが三作目となる林&西村コンビ。お二人の息の合ったコンビネーションで、ユーモアだけでは終わらない、独特の詩情も感じさせる、とっても素敵な作品になりました。
 

 この魅力的なおばあちゃんバナナたちのキャラクターが全国に広まり、子どもたちがバナナを見て「あ、バナナンばあばだ!」と言ってもらえるような、長く読み継がれる絵本になってくれればと願っています。