日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『小さなりゅうとふしぎな木』 長井るり子

(月刊「こどもの本」2013年1月号より)
長井るり子さん

いっしょに冒険を

『小さなりゅうとふしぎな木』は、「小さなりゅう」シリーズの四作目です。

 最初のお話を書いたときは、ここまで小さなりゅうががんばるとは思っていなかったので、応援してくださるみなさまのおかげと、感謝しております。

 このお話は、あらし島にすんでいる小さなりゅうのビックリが、島に伝わる昔話をきいたことからはじまります。

 昔、あらし島には、木や花がしげっていました。でも、しょっちゅう嵐がくるので、その植物たちがにげだして、岩ばかりの島になったというのです。

「足もつばさもないのに、どうやってにげたの?」

 ビックリは、友だちの白い鳥のチッチといっしょに、その謎をつきとめようと、島をとびだしていきます。

 卵から生まれたばかりの小さなりゅうにとって、まわりはふしぎでおどろくことばかり。なんでも知りたくてたまらないのです。

 ビックリたちは、霧のせいで森のなかに迷いこみます。ここは、旅行で行ったときに見た黒部峡谷の霧をイメージしました。

 濃いみどりの山や深い谷に流れてくる霧はとても神秘的で、いつか、こんな霧がでてくるお話を書きたいと思っていたのです。

 小倉正巳先生は、私の想像をはるかにうわまわる絵で、お話の世界を広げてくださいました。

 迫力のある植物や、めずらしい虫たちにもご注目を! お花畑にかくれているものを探すのも、楽しいですよ。

 また、ビックリが森で出会う新しいキャラクターは、わが家のハムスターがモデル。小さな手をつかって物を食べたり、鼻をしゅるしゅる洗ったり。ころんとしたからだを一生懸命にねじって、背中のほうまで毛づくろいをしたり……。

 いつまで見ていても飽きなくて、お話のなかにも登場してもらうことになりました。

 この本を手にとってくださる方にも、ビックリのおどろきや感動を共有して、いっしょに冒険を楽しんでいただけたらうれしいです。

(ながい・るりこ)●既刊に『小さなりゅう』『小さなりゅう 空をとぶ』『小さなりゅうと海のともだち』など。

「小さなりゅうとふしぎな木」
国土社
『小さなりゅうとふしぎな木』
長井るり子・作
小倉正巳・絵
本体1,200円