
僕は、信じている
「狙われた国と地域」シリーズの①ウクライナが発売され、③韓国を間もなく脱稿しようとしていた、2023年10月7日、パレスチナのイスラム勢力ハマスが、イスラエルを狙って突如攻撃。イスラエルはハマスに猛反撃し、すぐに立場が逆転した。ハマスのいるガザ地区が、イスラエルの攻撃の的となった。だがハマスだけが狙われたのではない。民間人の住宅、病院、学校も狙われた。狙う・狙われるは国際関係にあって、一瞬にして変わる。僕は、急遽④パレスチナの執筆を計画した。ハマスとイスラエル、どっちがどうではなく、戦争が何をもたらすのか、市民の生活が、子どもたちの暮らしがどうなるのか、同じ時代を共有する日本の子どもたちにも、絶対に戦争を起こしてはダメだと、より強く意識してもらう本をつくりたい。パレスチナの歴史や現状を通して。それは、②台湾が発売になった日のことだった。
パレスチナは、何を書いても必ず反論され、批判され、場合によっては非難されると、何人もの人に忠告された。
だからか? 今日本の子どもたち向けのパレスチナの本は、そう多くない。「今を、すぐに本にする」となると、僕にしかできないかも知れない。執筆する意味は大きい。自らを鼓舞して数か月、寸暇を惜しんで作業に当たった。
案の定、いろいろなご意見が出された。とくに「狙われた国」「狙う国」とラベリング(レッテル貼り)するのはおかしいとか、子どもたちに「狙う国」が「悪い国」だという思いを抱かせるのはおかしいなどと、SNSに書き込まれたのには、唖然とした。
どっちが悪い国だと思わせる?
子どもたちは、そんな愚かではない。読む力も感性もすばらしいものを持っている。僕は、読者をそう信じている。
僕の作ってきた本の数は、編集者として1500冊以上、自著も100冊を超える。児童書でも、読者の力を信じて内容のレベルを下げることなく情報を精選する。だから僕の本はよく「対象年齢不詳」などと言われる。
目下、⑤イスラエルを執筆中。
(いなば・しげかつ)●既刊に『「目からウロコ」単位の発明!』(全5巻)、『専門家たちが語る 防災意識を高める本』(全3巻)など。
あすなろ書房
『狙われた国と地域④パレスチナ』
稲葉茂勝・著/松竹伸幸 監修
定価3,520円(税込)