
「おんぶ」と「ぶーぶー」
「トラックの上にトラックがいる!」
五年ほど前、車で遠出をして高速道路のサービスエリアで休憩をしていたときのこと。駐車場の一角に、荷台にトラックをのせているトラックを見つけました。それは、よく見かけることのある、車を運ぶキャリアカーではなく(後で調べたら「カーゴクレーン」という車でした)、トラックの上に同じ形の一回り小さなトラックがびっちりとへばりつくようにのっているのです。その姿はまさに親子がおんぶしているようで、なんとも愛らしいものに見えました。
その後しばらくして、のりものの絵本をつくろうと考えたとき、車の上に車をのっける絵が思い浮かびました。先述の出来事はすっかり忘れていたのですが、頭のどこかでその記憶がスタンバイしていたのでしょう。
「おんぶ」に車のオノマトペ「ぶーぶー」で、「おんぶーぶー!」
そんな具合に最初の案がすっと浮かんだのです。そして色々なのりものとオノマトペを組み合わせてラフをつくり、編集者さんと何度も練り直し、保育園での試し読みなどもしていただいたのちにこの絵本が生まれました。
おんぶされる小さいのりものは子どものような存在、おんぶする大きいのりものはお父さんやお母さんのような存在です。そして、まるごとみんなをおんぶしてくれる大きな船は、日々、子どもをおんぶしているお母さんやお父さんたちのことも、たまにはおんぶしてあげたいなあ、という気持ちで登場させました。
おしまいのページでは、その船が「ぶぉー ぶぉー」と汽笛を二回鳴らして左に旋回していきますが、ここには、大きな背中の上でみんなが安心して家路につけますように、という思いも込めています。ぜひ、子どもたちと一緒に声を出して楽しんでもらえたら嬉しいです。
ちなみに、三回の汽笛は後進の合図になってしまうそうなので、「ぶぉー」は二回だけにしてくださいね(笑)。
(やの・あけみ)●既刊に『どうぶつドドド』『みかんおいしくなーれ』『ふきふきぱっ!』など。
童心社
『おんぶーぶー』
矢野アケミ・作
定価1,320円(税込)