日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『ぐうたらねこ』 ひがしちから

(月刊「こどもの本」2025年4月号より)
ひがしちからさん

憧れの猫絵本

「猫が主人公の絵本を描きたいな…」

 けっこう前から思っていました。

 なにせうちには猫が三匹もいます。猫愛もそれなりに深いし、猫との付き合いも長い。飼育歴二十五年! これは描けるに違いない。それに「猫絵本」という言葉の、なんと魅力的なことか。

 僕は、分かりやすいジャンルがある絵本にちょっと憧れがありました。いや、別にいいんですけどね、分かりやすいジャンルがあってもなくても。でも、書店員さんに「この絵本、売りやすい!」って言ってもらいたいですから。

 そんなわけで、いよいよ猫絵本を描くことになりました。

 最初は、「何もしない猫が事件を解決する」みたいな話を考えながら、「猫は特別なことをしなくても、そのままで十分かわいい」とか、「自分ちの猫を描く」とか、「猫はあくまで猫のままで」という要素を加え、お話を固めていきました。

 主人公の猫・ぐーちゃんのモデルは、うちの「にゃった」(♀十五歳)です。三匹の中で一番賢くて、ジト目がかわいい猫です。にゃったは、どんな無茶なポーズでも無表情で写真を撮らせてくれました。(にゃった、ありがとう!)

 お話の進行役は、ぐーちゃんと一緒に暮らす男の子・はるくん。自分が子どもの頃、猫と暮らしていたらどんな感じだろうと想像しながら描きました。ちなみに、はるくんは、ぐーちゃんが褒められているのを羨ましく思っていますが、実ははるくんも両親からすごく褒められているんです。お話の最後で、はるくんがぐーちゃんにかける言葉は、普段はるくんが両親から言われている言葉だったりします。

 お話が形になり、ぐーちゃんをどれくらいリアルに描くか試行錯誤しながら絵を描き、ついに『ぐうたらねこ』が完成しました。

 絵本が出来上がった後、驚いたことがあります。普段、自分の絵本をあまり人に薦めることはないのですが、この『ぐうたらねこ』はめっちゃ薦めています。「猫絵本描いたよ!」って。この薦めやすさ、さすが猫絵本です。

(ひがし・ちから)●既刊に『ぼくのかえりみち』『どーん、じゃんけんぽん!』『おむかえ』など。

『ぐうたらねこ』"
佼成出版社
『ぐうたらねこ』
ひがしちから・作・絵
定価1,650円(税込)