
素敵な未来をおつくりくださいませ
この作品の主人公である千奈美は、友人が離れていった過去のせいで自分を出すことに臆病になり、周囲に合わせて過ごすようになってしまった女の子です。千奈美は、仔猫を助けたことをきっかけに、自分の恋愛予定の書かれたカレンダーを手に入れます。
予定どおりに進んでいく日々。けれど『告白される日』と書かれた日に、想定外のことが起きて……。
すでに予定されている未来があれば、心構えもできるし、安心もできるのかもしれません。けれど、想定外のことが起きた時、もしくは今後の予定が急に真っ白になってわからなくなってしまった時、自分ならどうするでしょうか。
この作品のようなファンタジーではなくても、こうしようと計画していた未来設計が、挫折や天災や事故等で予定どおりに進まないことは、少なくありません。
また、こう進むべき、こうあるべきだと思っていたのに、ある日ふと、自分には合っていないと気付く時が来るかもしれません。
もしくは、急に素敵な予定が舞いこんでくることを願うだけで、最初から真っ白な予定のカレンダーを眺めているだけの人もいるでしょう。
今並べたこと全て、私にも身に覚えがあります。
自分で自分の日常を変えること。自然に変わるのではなく〝変える〟ためには、怖さや恥ずかしさや億劫さに負けず、ちょっとだけ頑張らないといけません。
けれど、まさに今、自分の人生の本番真っ只中で、今日明日の行動ひとつで、未来がいかようにも変わります。その時その時で自分の人生の手綱をしっかりと持ち、行動する。その大切さが、千奈美を通して少しでも伝わったら本望です。
チャンスは待つものではなく、つくるもの。
「どうせ」という口癖はやめて、あなたもカレンダーの明日の日付の下に、『〇〇予定日』と書いてみませんか?など。
(あさざわ・かな)●既刊に『放課後図書室』『笑っていたい、君がいるこの世界で』『あの日の花火を君ともう一度』など。
PHP研究所
『55日後、きみへの告白予定日』
麻沢 奏・著
定価1,540円(税込)