日本児童図書出版協会

児童書出版文化の向上と児童書の普及を目指して活動している団体です

こどもの本

私の新刊
『自分らしく、あなたらしく きょうだい児からのメッセージ』 高橋うらら

(月刊「こどもの本」2024年11月号より)
高橋うららさん

きょうだい児の一人として

 きょうだい児という言葉をご存じですか。病気や障がいのある兄弟姉妹がいる子どものことを指します。

 私も聴覚障がいのある妹がいるので、その一人でした。子どもの頃は、将来妹はどうやって生きていくんだろう、誰が面倒を見るんだろう、などと、いろいろ悩みました。

 きょうだい児は、人によって情況が千差万別ではありますが、次のような悩みを抱えがちだとされています。

①兄弟姉妹の病気や障がいに悩む。
②親にかまわれず孤独を感じる。
③親に期待され、いい子になりがち。
④障がい者に対する差別が気になる。
⑤障がいのある兄弟姉妹から暴力や暴言を受ける。
⑥家族を気にして自分の進路に悩む。
⑦自分の結婚に関して悩む。
⑧親が亡くなった後のことを心配する。

 今回のノンフィクションは、このようなさまざまな悩みを持つ当事者の子どもたちに向けて書きました。

 難病の妹さんを持つ、中山穂乃果さんという女子高生を中心にしたストーリーです。支援団体に出会った彼女は、他のきょうだい児に向けて「あなたは一人じゃない」と発信しています。

 大人目線のきょうだい児の本が多い中で、子どもの声を取り上げた今回の本は、貴重ではないかと考えています。

 一方で、元きょうだい児の大人二人にも取材しました。

 弁護士としてきょうだい児に関する活動をしている藤木和子さんと、自分の家族を支えながら、障がい者を支援する会社を起業した志村駿介さんです。

 大人二人の葛藤、職業選択の様子は、若い読者のみなさんに力を与えてくれるのではないかと思っています。

 きょうだい児に限らず、家族から重いプレッシャーを受けたり、家族関係に問題があったりと、生きづらさを感じている子どもは多いと思います。

「がまんせず自分らしく生きてほしい」というのは、そんなすべての子どもたちに向けたメッセージです。

(たかはし・うらら)●既刊に『おとうとのねじまきパン』『じぶんをすきになるおまじない』『風を切って走りたい!』など。

『自分らしく、あなたらしく きょうだい児からのメッセージ』"
さ・え・ら書房
『自分らしく、あなたらしく きょうだい児からのメッセージ』
高橋うらら・著
定価1,650円(税込)