
「声」からはじまり「声」をとどけています。
「子どもの本の作り手になりたいなら、まず書店員になりなさい」留学先から帰国したばかりの私にとって、目の覚めるような鶴の一声でした。「作る前に売る……ですか?」それはつまり「現場を知りなさい」ということだったのです。その日から書店員として、回り道も、寄り道もたっぷりした今、ようやく作り手になることができました。『にゃあにゃあたいそう』は、声に出して、歌いながら、からだを動かしながら子どもたちと読みたい絵本です。
子どもたちと絵本を読み合うとき、書店員として選書をするとき、そして絵本を作るとき、必ず自問をします。絵本とは声に出して読むもの。目の前の、この一冊の絵本は、その声が心地よく響く絵本ですか、と。まだ字の読めない小さな子どもたちは、読み手の声に耳を傾けながら、じっと絵を見ます。耳で声を受け取り、目で絵を見て、絵本を「読む」のです。一日に何度だって「いい声」を聞きたいのです。
私は幼い頃から、母親の声が大好きでした。ひとりで本が読めるようになってからは、イメージの中の声の主は、母親でした。ピチュピチュ、リルリル、と、あまりに朗らかな声の持ち主で、小鳥がしゃべっているのかと思ったほどです。いつからか自分の耳に心地よい声が届く絵本を作ってみたい、と思うようになっていました。
ある日のおはなし会で、楽しく絵本を読む私と、ゲストの宮野聡子さんのコンビに、「ふたりで絵本を作っては?」と、またもや第二の鶴の一声が! ネコのにゃーにゃと、ハムスターのはーにゃ。宮野さんの描く愛らしい二ひきが、絵本の中で
朝起きたら読みましょ。歌いましょ。たいそうしましょ。声ではじまる一日は、晴れやかになること間違いなしです!
(たけもと・かなえ)●既刊に『「親子あそび」のえほん』(共著)、既訳書にプロイスラー『みどりいろのつりがね』など。
教育画劇
『にゃあにゃあたいそう』
武本佳奈絵・さく/宮野聡子・え
定価1,210円(税込)